テラーノベル
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時間が過ぎるのは早く、あっという間に下校時刻になっていた。
教室では遊ぶ約束をする声が聞こえる。
俺はその声から逃げるように裏庭に向かった。
「おっ、来たか」
「ああ゛じゃあやるか」
俺はいつも通り、いつもの喧嘩相手と喧嘩をしようとする。
俺達は互いに向かい合い走りかかろうとする。
そして、俺は拳を握りその拳を相手にぶつけようとした。
だが、そうする前に相手の動きは止まった。
「なんで、止まるんだよ゛」
「いやいや、俺は悪かねぇぜ」
「はあ゛?」
相手は顔で後ろを示す。
俺はそれに従い警戒しながら後ろを向いた。
そこには、影からひっそりと顔を出した永目が居た。
「は、なんでお前そこに居んだよ」
「ぇ、ぇと、」
永目はその場から動かず、落ち着かない様子だった。
これでは話ならない、俺はそう思い永目に近づくことにした。
そして、俺は近付き、永目の事を見下ろす。
「なんで、見てんの?」
「裏庭に行くのが見えたから、」
「それで、なんで着いてくんの?」
「……だって、一緒に帰りたかったから!」
永目は俺の事を上目遣いしながら、自信に満ちた目で言う。
『一緒に帰りたかったから!』
言われてから時間は経っているもののその言葉は俺の頭の中にずっと残っていた。
「なんで、俺と?」
「……いや、分かんない、」
永目は視線を斜め下に下ろし、小さい声で言う。
その仕草といい、さっきの言葉といい、永目の全てが愛おしく感じてきた。
愛おしく感じるのも何故か違和感が感じなくなってきた、その俺が不思議でしかない。
「まあ、いいや、」
「ぇ?」
「帰ろ」
俺がそう言った瞬間、永目の目はパッと光り輝いた。
「ほんと!?」
(そんなに嬉しいのか?)
俺は永目にそう思いながら、喧嘩相手の元に向かった。
「帰るわ」
「へぇへぇ、分かったよ、今度一発殴らせろよ」
相手は呆れているのか、馬鹿にしているのか分からないような態度で言う。
「はいはい、お前に出来るならな」
俺は相手にそう言いながら永目の方に向かった。
俺と永目は校門を通り帰路に着いた。
「っていうか、早見もこっち側なんだね」
「ああ、そうだな」
そう、さっき気づいたことなのだが、俺と永目は帰る方向が同じらしい。
永目は今まで会わなかったのは奇跡だとかなんだとか言っていた。
さすがに大袈裟だなとは思ったが、馬鹿にする気は全く起きなかった。
「なんか、早見って見た事あるような顔してんだよね」
「なにそれ、ディスってんの?」
俺もなんだよな、
というのは心の中に秘めておくことにした。
「違う、違う、そういうつもりじゃなくて、」
「分かってるよ、んなことは、」
それから俺達は他愛もない会話をしていた。
俺はこの瞬間がとてつもなく好きだった。
「早見の家ってどこなの?」
「えっと、あれ」
俺はそう言いながら、ボロい三階建てのアパートを指差した。
「……え、あれ?」
永目はそう言いながら、とても驚いた顔をしていた。
そりゃそうだ、こんなボロいアパートに住んでいたら驚くに決まっているだろう。
「じゃ、帰るわ」
何となく、居心地が悪くなり俺はその場から離れた。
「ぁ、うん、またね…」
俺は困惑した様子の永目を見届けてから重い、家の扉を開いた。
俺は家に入った。
玄関まで酒の匂いがしてくる。
そして、リビングに向かう廊下には割れた瓶が散乱していた。
最近、この時間になると親父は寝ていることが多い。
だから、普段よりもそっと静かにリビングの扉を開ける。
そこには、付けっぱなしのテレビ、食べたばかりであろう昼ごはんの空き容器、リモコンを握ったまま寝ている親父の姿があった。
(最悪だ……)
俺はそう思いながら、静かに自分の部屋へと向かった。
部屋に入るとどっと疲れが湧き上がってきた。
ベッドに寝転びながら今日見た夢をまた考える。
時間は沢山経っているはずなのに全く忘れることが出来なかった。
永目が車に轢かれる瞬間
思い出しただけで呼吸が早くなる。
(あぁ゛忘れろ)
俺はそう思いながら風呂の準備をし、風呂に向かった。
風呂から上がり、俺は寝ようとする。
またあの夢を見るかもしれない、
そう思う気持ちをグッと抑え、俺は浅い眠りに付いた。
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