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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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コメント
1件
うわぁ、この回、すごく良かったです……。千歳ちゃんが自分を女の子だと自覚してなくて、主人公を拒絶されたと勘違いして泣いちゃうところ、胸がぎゅっとなりました。でもその誤解を解くために初めて抱きしめた主人公の「もうダメだな」の気づきが、じわじわと切なくて。お互いを大事に思う気持ちが丁寧に描かれていて、読んでいて温かい気持ちになりました。おやつのルール、可愛すぎます🤍
やっと仕事が終わった。やれやれ、これでやっと休日だ。
椅子から立って伸びをすると、食卓の座卓でのんびりしてた千歳(朝霧の忌み子のすがた)に『仕事終わったか?』と聞かれた。
「うん、これでやっと今日は休み」
『じゃあ今、ちょっといいか?』
「ん? うん」
返事すると、千歳は立ち上がって俺に抱きついてきた。胴体にダイレクトにくる柔らかい感触!
「ちょ! ダメだって、今はダメだって!」
慌てて引き剥がしたが、千歳はものすごく不満顔だった。
『なんでダメなんだ?』
「いや、その、無理だよ、ダメだよ、今は!」
こんな超絶美少女に胸まで押し付けられて抱きつかれたら、正気ではいられないだろ!!
『……なんでだ? ワシの体、気持ち悪いからか?』
千歳の目に、みるみる涙が浮かんだ。
「え?」
千歳は大粒の涙をこぼし始めた。
『ワシの体変だから、気持ち悪くてくっつかせててくれないのか!? ワシのこと気持ち悪くなったのか!? 大事じゃなかったのか、ワシのこと!?』
「え、え?」
『ひどい! 大事だって言ってくれたじゃないか! もう大事じゃなくなったのか!?』
千歳は大泣きし始め、俺は慌てたが、もしかして、と思うことがあった。
千歳、もしかして自分がすごくかわいい女の子に見える自覚がないのか? だから、俺にあんまりくっつくなって言われてる理由がわからないのか?
え、じゃあ千歳の中では、自分が異形になったから俺がくっつくの嫌がってるってことになってるのか!?
違う!! ぜんぜん違う!!千歳がものすごくかわいくて魅力的で、でも子供みたいにくっついてくるから、それは不健全だからってだけだよ!!
「違う、ぜんぜん違う、泣かないで……」
『じゃあどうしてくっつかせてくれないんだ!!』
ど、どうしよう、千歳が泣く理由は腑に落ちた、どうにかしなければ、ど、どうしよう、俺が気持ち悪くないって思ってると証明しなきゃいけないんだよな、それなら、それなら……。
俺は、思い切った。腕を伸ばして、初めて千歳を抱きしめた。
「全然気持ち悪いなんて思ってない!! ぜんぜん違う!!」
千歳の柔らかい体。『え? え?』と戸惑う千歳を、俺はずっと抱きしめ続けた。
……千歳を抱きしめたら、俺は、もう他の人と抱き合っても、千歳を抱きしめるほどにならないだろう、と思っていた。だから、ずっと千歳を抱きしめるのを避けてた。千歳の望みが、俺が他の女の人と結婚して子供を作ることだってわかってたから。
今、千歳を抱きしめてみて……。俺は、あ、俺もうダメだな、と思った。
他の人と結婚なんてできないや。俺は、この人が一番必要だ。もう、どうしようもなく、心底……。
……好きだ。
「千歳のこと気持ち悪いなんて思ったことないよ、全然くっつかれて嫌じゃないよ。抱きしめるの、すごくいいよ」
千歳を諭すように言う。大好きだよ、心の底から愛してるよ。
千歳は恋愛も性愛もピンときてない。だから、この気持ちは押し込めておかないと。でも、心の底から大好きな人を、傷つけるようなことは絶対したくない。今の誤解は解かなくちゃ。大好きな人は、大好きな人として扱わなくちゃ。
『……嫌じゃないのか?』
「全然嫌じゃない」
俺は少し千歳を抱きしめる手を緩め、顔を上げて千歳の顔を見た。千歳はぽかんとしていて、頬に涙の跡が残ってはいたが、泣き止んでいた。
名残惜しかったが、俺は千歳の体を離した。千歳の背中だけ、ポンポンと撫でる。
「えっとね、あのね、今の千歳、すごく女の子だからね、だから軽々しくくっついちゃいけないと、俺男として思って……」
『へ?』
千歳は目を瞬かせた。
『ワシ、女に見えるのか? 髪長いから?』
たしかに、今の千歳はロングヘアだが。
「いやもう、髪とかの問題じゃなくて全体的に……体つきとか……」
中学生くらいの背丈だし、どちらかと言えばスレンダーなのだが、それでもわかるくらいに体のラインが女の子だしなあ。胸も、中学生の範疇とは言えあるし……。
思った通り、千歳は自分が女の子に見える自覚が全然なかったらしい。目をまん丸にしていた。
『え、そんなに?』
「えっとね、自覚ないみたいだけど、今の千歳、すごくきれいでかわいい女の子に見えるんだよ。千歳はあんまり自分のこと、男とも女とも思ってないみたいだけど」
『そ、そうなのか……』
「だから、変にくっつかれると俺ドキドキしちゃうから、嫌とか気持ち悪いとかじゃ全然ないんだけど、その、あんまりくっつきすぎるのは控えてもらえないかと……」
『え、じゃあ今のぎゅーは?』
「今のは緊急事態だからしただけで、もうしません」
今の千歳をこれ以上抱きしめたら、絶対俺は邪な気持ちが出る。
『ええー!? やだ!!』
千歳が本当にがっかりした顔をしたので、俺は、ハグの力って強力なんだなあ、と思った。
「千歳が女の子の姿じゃなくなったら、いくらでもしたげるから、しばらくは我慢してよ」
『でも、お前、ワシがくっつくの自体は嫌じゃないんだろ? どういうくっつき方ならいい?』
「え、ええと……」
その後、俺と千歳は、どういうくっつき方ならいいか話し合い、とりあえず背中をくっつけたり、横にくっついて座ったりならOKということにした。
『今日のおやつは、横にくっついて座って食べてくれなきゃ嫌だ!』
「ご希望どおりにいたします……」