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第3話「捨てられた朝、終わらぬ会議、そして帰宅の嘆き」
まだ薄暗い白い部屋の中、日本は静かに眠っていた。
だが、その胸の奥にはぽっかりと空洞ができていた。
いつもの朝の音も、足音も、声もない。
「お兄ちゃんたち……?」
呼んでも、返事はない。
まるで自分だけが世界から消えたような孤独感に襲われ、息が苦しくなった。
「は、はぁっ……はぁっ……!」
呼吸は浅く、速くなり、体中に酸素が足りなくなる感覚が襲う。
手は震え、胸が締め付けられ、視界は霞み始める。
「いやや、いやや……ここにひとりぼっちなんて、いやや……!」
涙が頬をつたい落ち、声にならない叫びが部屋中に響いた。
――その声は、遠くの廊下や隣の部屋に届くことはなかった。
***
一方、世界の舞台では、長く苦痛な会議が続いていた。
巨大な会議室。
四角いテーブルを囲み、各国代表が資料を前に黙々と座っている。
代表・国連が開会の挨拶をし、議題が始まる。
アメリカが陽気に話すが内容はいつも通りで、
「Yo, same old story, huh?(またかよな)」と冗談を交えながらも皆疲れた顔だ。
中国は冷静に進行を促し、イギリスが「Gentlemen, let’s focus」と声をかける。
しかし議論はいつも堂々巡りだ。
「我々の提案は既に提示済みだ」
ドイツは淡々と言い放つ。
「だから何だ?進展は?」
ナチスは鋭く突っ込み、会議の空気は険悪になる。
イタリアとイタ王は不安げに、時に語尾を伸ばしながら意見を述べ、ロシアとソ連はため息混じりに酒を呑む夢を見ている。
何時間も経ち、時間は過ぎるだけ。結論は出ず、言葉だけが繰り返される。
陸、空、海は疲労困憊し、心ここにあらずで資料を睨むばかり。
「一体いつ終わるんだ……」陸が机を軽く叩いた。
空は背もたれにもたれて目を閉じ、海は無言で腕組みする。
代表・国連が再度話を切り出すも、誰の耳にも届かない。
***
夜が深まった頃、三人は急いで家へ戻った。
家のドアを開けると、薄暗い部屋の中から微かな嗚咽が聞こえた。
「日本!いるか!?返事してくれ!」
空が声を張り上げる。
日本は床に倒れ、震えながらも目を開けた。
「……兄さま……ごめん……ぼく……ぼく……」
陸がすぐに駆け寄り、そっと抱きかかえる。
「泣くな。お前はずっと、俺らの弟だ」
海もそっと背中を撫で、空が涙をぬぐった。
四人は言葉よりも強い想いで繋がり合い、夜を共にした。