時は遡り、大災害。
この日俺とCptは東京で遊ぶ約束をしていた。
俺達は韓国人だけど、よく日本に来ては買い物や、美味しいものを食べていた。
今回も。都心部にあるでかいショッピングモールに行き買い物をして楽しんでいた。
Cptは暑いからと言ってアイスを大量に食べるもんだから、
「そんなに食ったら腹壊すよ」という俺の言葉も届いてるのか届いてないのか、曖昧な返事をしていた。
買いたい物を買ってそろそろチェックインしたホテルに向かおうとタクシーを呼ぼうとした時、突然世界が変わった。
さっきまで晴れた青空だった空はどんよりとした紫色になり、辺りには黒いモヤがかかりだした。
本能的にここは危険だと察し、俺は“まだ機能している”片目で必死に周辺を見渡した。
隣にいたCptも異様な空気を察してか、先程の溶けきった顔から真剣な顔に変わっている。
このモヤに触れてはいけない そう思った俺は、Cptと共にモヤが薄くなっている所を探し避難した。
周りからは「なんだ?」などと一部から声は上がっているが、気にせず歩いている人もいる。
程なくして、さっきまで歩いていた人達が突然苦しみだし、モヤを身にまとい、昔映画で見たゾンビの様な状態になってしまった。
その光景を隣で見ていたCptも、あまりの異常な状況に
「え…なに、これ」と声を震わせながら呟いている。
「逃げるぞ」野生の勘だろうか、あいつらに見つかってはいけないと咄嗟に思い、俺達二人はその場を後にした。
俺は小柄だからあいつらが襲って来たとしても逃げれるだろうけど、Cptはでかい上にトロい、絶対に捕まると思った、こいつが捕まったら俺は助けれるだろうか?そう考えながらも人通りが無く、モヤも薄い道を選んでひたすら走った。
「もう走れないよ・・・うわぁ!」突然後ろから叫び声が聞こえ振り返ると、汗だくのCptの腕を掴む男の手が見えた。
そいつもまたゾンビの様になっているが、まだ自我があるのか
絞るような声で “タスケテ…タスケテ…”と何度も呟いていた。
Cptは腕を振り払おうとしているが、男の力が強いのか中々振り払えずにいる。
そうこうしている内に入ってきた道の入口付近に他の化け物も群がってきた。
ここで止まっている暇は無いと思った俺は、腕を掴んでる男の手を無理矢理引き剥がそうとした。
その時、男は突然モンスターのような雄叫びをあげ、俺の左手に噛み付いてきたのだ。人間と思えない咬合力で俺の左手は吹き飛んだ。
あまりの事で驚いていたが激痛で我に返った。
その場で蹲る事しか出来ずにいると、何かを決心したような顔のCptが俺を担ぎ上げそのまま全力で走った。
小さな公園に行き着いた。着ている服を破り傷口に当て止血を試みるも、出血量が凄く俺の意識も遠のいてきた。
この公園の周辺にもモヤがあった。きっとここに居てもまた次の化け物が襲ってくるなどと考え、俺にしては珍しく弱気になっていた。
そんな中でもCptは必死に俺を助けようとしている。
涙目になりながら、なんでこれ取れないんだよ 呟いている。
俺の左手には噛まれた時にまとわりついた黒いモヤがついていた。
きっとあいつらがおかしくなったのは、このモヤが原因だろう。
このままでは、きっと俺もすぐあいつらと同じ、自我を持たないものになるんだろうと考えた。
何故か、モヤがまとわりついてから、俺の思考はマイナス方向にしか動かなくなっているみたいだ。
万事休すという日本語があるらしいが、今のこの状況はその言葉がしっくりくると思う。
辺りが本格的に暗くなり、遠くから先程の雄叫びの様な声が聞こえ、いよいよかと思っていた矢先、目の前に小柄だがガッシリした体つきの影が見える。そいつは俺達に向かって「よく耐えたね。」と一言呟き俺とCptの頭を優しくポンポンと撫でた。
そのまま俺は意識を失った。
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