テラーノベル
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ある日――
私は、とある恐ろしい事に気づいてしまったかも知れない。
信じれるのは、私だけだという事。
私以外、仲間は居ないという事…
唯一の頼みの綱は、家族だった。
家族なら、絶対こんな事は無いはず―――!!
そう思っていた。
だけど、それは違っていた。
家族でさえも、私の思っている“人”では無かった。
彼らからは、感情が消えていた。
事実とデータしか見ない世の中に変わり果てていた。
笑いも、悲しみも、何も無い。
心に一つ穴が空いたような、そんな虚しい気持ちになった。
そう。
私が気付いたのは……
私以外の人間はみな、
“人間”では無いという事……………。
「おはよう…」
「おはよう。今日も爽やかな天候だね。頑張ろうね。」
「う、うん…。」
「あれ?璃子ちゃん、元気が無いようだね。大丈夫?手伝えることはある?」
「!(心配してくれてる、顔じゃ無い…… 本当に、感情という概念が無いんだ____。)」
私はそれをどうしても感じてしまい、友達にも友達として接せれなくなってしまった。
なぜなら、人では無いから…
私の予測だと、たぶん私以外はAIになってしまったんだと思う。
感情も何も無い、ただの喋るだけの機械。
そしていつしか、私は人とバレないように、密かに暮らすようになった。
でも、どうしても諦められない人が居た。
それは、皆が人間だった時に恋した2年の先輩だった。
優しくて、私が近くにいると笑顔で話しかけてくれて―――。
その表情全てが愛おしくて、一瞬で好きになった。
彼は、彼だけは―――
諦めたくないんだ。
私は休み時間、恐る恐る先輩の教室を覗いてみた。
そこには、机に突っ伏せている一ノ瀬先輩の姿があった。
そして彼は私に気づき、教室の外まで駆けつけてくれた。
「璃子ちゃん、おはようっ!久しぶりだね!」
「おはよう、ございます……」
「ん?なんか元気無い…?大丈夫…?気分悪いとか、そういう感じ?」
「あ、いえ!そういうんじゃ…」
「そっか。それなら良かった! …あ!俺、用事思い出しちゃったわ…。 ごめんだけど、またね!」
「はい…っ!」
私達はいつも通り会話を交わした。
でも私は、まだドキドキしていた。
これは恋という感情。
彼には感情も無いから、私のことを好きになってもらう訳も無い。
それと同時に、私はAIに恋しているという事実に嫌気が差す。
付き合ってと言っても、二つ返事でOKしてくれるんだろうな。
感情も無いのに、口だけだろうけど――。
私はそれが悲しくて仕方無い。
でも、それが当たり前の社会になっている。
AIに乗っ取られた地球が、当たり前になっている。
____私、どうすれば良いんだろう―――?
そんな不安に押しやられながら、私は家に帰った。
――翌日
「(もう、先輩に会わない方が身のためかな…。)」
そんな気持ちさえ抱いていた私は、また胸を抑えながら教室に入る。
ここでは、出来るだけ元気な私として振る舞わないといけない。
決して、人間とバレないように―――。
そして、またAIと会話をする。
「おはよう!今日も天気が素晴らしい一日だね!私は気分が良いよ!」
「うん、おはよう!私も、気分が良い!頑張ろうね!」
「今日は元気モリモリだね!そうだね、頑張ろう!」
そこで会話は途切れる、はずだった。
でも、AIは更に会話を続けようとした。
いつもとは違う反応だった。
「私、都市伝説のような物に興味があるんだ!」
「! へぇ、そうなんだね…?」
「それで、面白い説を見つけたんだ!これなんか、君は信じる?」
そう言いながら彼女が差し出してきたのは、スマホ。
その画面には、何かの映像が流れている。
私には理解できる物では無かった。
でも、それを見せながら彼女が話し始めた。
「自分以外の人類は、皆ただの動く物体だ、という説だよ!」
「え………。」
「この説に反論出来る人はまだ現れていないんだ。もしこれが本当なら、とんでも無い社会になるよね!面白い話だよ!」
「(怖い、怖い……!! 皆、何が面白いの…!? 怖いよ、それが本当だったら…、、 嫌だ、そんな社会…!!嫌だ…!!!)」
私は、途端に我慢できなくなった。
私の足は、自然と廊下に走り出す。
「ごめん!!用事っ!!」
そう言いながら全速力で彼女から逃げ、ただ走って走って、校舎の裏道に逃げ込んだ。
「ハァッ、ハァッ……、、」
普段誰も居ないここ、校舎裏。
ここなら、一人で落ち着くまで居られるだろう。
きっと――。
そう思っていた。
けど、体育座りをしてぼんやりしている、一ノ瀬先輩を見つけてしまった。
そして私の荒い息が聞こえたのか、先輩は振り向いた。
「あっ、璃子ちゃん!…なんでこんな所に?というより、走ってきたみたいだけど大丈夫?」
「先輩っ… 先輩こそ、なんでここに居るんですか…?」
「うーん… ボォ〜ッとしてただけだよ笑」
いつものように、優しく私に話しかけてくれる。
AIとは思えない自然さだ。
―――でも、先輩がAIなら、話をはぐらかされるのかな…?
それとも、興味深いって言われるのかな…?
私はそれが少し気になって、先輩にこれまでの全てを打ち明けることにした。
「先輩!聞いてほしいことがあるんです。 実は……」
___しばらく話すと、少しの沈黙の後、先輩は真顔でこう切り出した。
「実は、俺も…」
その言葉全てが、ずっしりと重く感じる。
空気もそれに伴って重くなっていって…
「(…)」
“実は俺も、その説を考えてたんだよね。”
「!」
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