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バレンタインの凶夢
「凶一郎君喜んでくれたらいいんだけどな」
そんな言葉を漏らすのはキッチンで苦戦する一人の女の子
「うー…上手くできないなぁ……」
「ふふ、私も手伝おうか?夢姉ちゃん」
「!!六美ちゃん!ありがとう、でも初めてのバレンタインだから…自分で作ったものを渡したくて」
「!!いいね!それじゃあ私は横で太陽に上げるやつ作るから、分からないところあったら聞いてね!夢姉ちゃん」
「うん!ありがとう六美ちゃん」
「うん!どういたしまして」
六美ちゃんは可愛くて眩しいな
1人で作りたいのも本当だけど、六美ちゃんが作った部分にだけ集中されそうで怖いから。
…そんな理由で断ったのもある。だって…私だって凶一郎君のよ、よ…お嫁さんなんだもん!!
「…」
六美ちゃんと穏やかにそれぞれの旦那さん宛に作ってる今、何故あのシスコンが邪魔してこないんだ?と思うでしょ
ふふ、覗かれてバレたくないから。だから、彼の親友の灰君に頼んだの
そしたら任せてて!!って一つ返事で応えてくれて、リンちゃん達までもが協力して明日の朝までは帰って来れないようになってるから。
だから、今日中に絶対に終わらせて明日には渡すんだ、このチョコ
「ふふふ、お兄ちゃんの事本当に好きだね夢姉ちゃんは」
「!!そ、そうかな?まぁ凶一郎君は私の命の恩人だから…」
「へぇ?」
ニヤニヤしながらそれだけじゃないでしょ?お姉ちゃん♡って声まで聞こえた気がするけど、そんな事ないもん…うん、絶対ない!
照れるのを隠すように手を動かす
二人で作っているとあっという間に時間は過ぎて、あとは熱を冷ますだけになった
「時間経つの早いね六美ちゃん」
「そうだね、夢姉ちゃん」
「うん」
「…夢姉ちゃんは、お兄ちゃんのどこに惚れたの?」
「?!」
「お兄ちゃんに聞いても教えてくれなくて…」
…、凶一郎君って教えてなかったんだ。嬉しいなぁ
あの六美ちゃんにも言わないなんて…ふふ
「うわぁ…幸せそうな顔してる夢姉ちゃん」
「え?!そ、そうかなぁ?…ふふふ」
「そうだよ夢姉ちゃん!でも2人の秘密ならこれ以上はやめとくね?」
「ありがとう六美ちゃん」
「いいよ〜!!じゃあ熱も冷めたし、ラッピングしちゃお?お姉ちゃん」
「うん、しよっか六美ちゃん」
結局凶一郎君は晩御飯の時に帰ってきた
六美ちゃんのおかげで全部ラッピングして隠すことも出来たし、お迎えに行こうかな
「夢姉ちゃん、頑張ってね!」
ボソッと私に囁くと六美ちゃんは太陽君の所へ行った
これは明日太陽君の真っ赤な照れ顔が見れるな笑
凶一郎君が太陽君たちの邪魔をしないように今度は私が協力しよう
「おかえり、凶一郎君」
「あぁただいま夢」
「ふふ、疲れたでしょ?ジャケット預かるよ」
「感謝する」
ご飯ができるまでの間部屋で寛いで時間を過ごす
「夢、明日は予定空いてるか?」
「!!うん、空いてるよ凶一郎君」
「そうか、良かった。お前とディナーに行きたかったからな」
「!!」
私が過去に1度いいなぁと言ったことを覚えていてくれるなんて!!
さすが凶一郎君だなぁ
「フッ、そうだろう?夢。それじゃあ晩御飯食べに食卓に行こう」
「はぁい」
そうしてその日は終わり翌朝
「凶一郎君おはよう!!」
「あぁおはよう夢」
「えへへ、これ…バレンタインのお菓子。」
「!!」
「受け取ってくれる?凶一郎君」
「もちろん受け取らせてもらおう。感謝するぞ夢」
ニッと笑って私の頭を撫でると凶一郎君は幸せそうに隠し部屋に持って行った
「……ぇ?」
「くくっ、そんな顔をしなくてもちゃんと食べるさ笑」
「あっ!!あ、いや、その……」
「ははは、慌てふためいて可愛いなぁ?夢♡」
ムッ、少しからかわれた気がする…!!
「そう拗ねるな夢。お前から貰った初めての手作りバレンタイン等、飾るに決まっているだろう?」
「!!凶一郎君」
「だから、お前はそこでお利口さんにして待っていてくれるか?夢」
「うん!待つよ凶一郎君」
「あぁ」
凶一郎君は綺麗にラッピング等を外して、中身だけ取り出すと鋼蜘蛛等で再現した後に綺麗に戻して飾った
「うん、お前の作るお菓子は美味いな」
「えへへ、良かった!お口にあって」
「ふふ、お前の手作りが俺の口に合わない訳が無いだろう?夢」
「…!!」
「これからも頼むぞ?夢♡」
「はい!これからもよろしくお願いします!凶一郎君」
「あぁ。…それじゃあお前の失敗したやつももらおうか」
「え゛っ?!」
「お前の失敗したやつも俺にとっては成功した物と同じぐらい大切だからな、気にしなくていいぞ夢」
「…ぁ、きょ、凶一郎君…//」
恥ずかしくて俯いている私の頬を撫でると、場所を知っていたかのように私の部屋に向かった
「では俺はお前の部屋から貰うとしよう♡」
「ん゛え゛っ?!」
「ははは、この俺に隠し通せるなんてまだまだ甘いぞ♡、夢」
「うぅ〜…不味くても文句言わないでね?凶一郎君」
「あぁ、文句なんて絶対に言わない。お前の作るものは全て美味しいからな」
コロコロと喉を鳴らすように笑うと凶一郎君はささっと取って帰ってきた