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戦場は音が多すぎて逆に静かだった
爆発音も銃声も魔力が空気を裂く音も
すべてが遠くに感じる
「、、、生きてたか」
瓦礫の向こうから現れたのは同期だった
能力者の中で抜けて強い
前線に立てる実力がありながら
それでも俺の隣にいてくれた存在
この軍で唯一の無能力者である俺の隣に
「ここは危ない下がれ」
『命令?』
「違う」
短く言い切る声に迷いはなかった
それが少しだけ不安だった
瓦礫の陰に身を寄せる
魔力が交錯する気配がすぐ近くにある
「噂、聞いたか?」
同期は、前を見たまま言った
「無能力者を庇う奴は信用できない、とか
一緒にいると評価が下がる、とか」
胸の奥が冷える
初めて聞く話じゃない
「正直さ」
同期は視線を逸らした
「一緒にいると、俺まで疑われる」
遠くで爆音が鳴る
「俺は、まだ生きたい」
その言葉には、嘘がなかった
「お前が悪いわけじゃないのは分かってる
でも……目障りなんだよ」
はっきり言われた方がまだ楽だった
「切り捨てれば、、、評価は下がらない」
同期の魔力が、こちらを向く
「待てッ!」
シャオロンの声が割って入る
俺の前に立つ隊長、
構図ははっきりしていた
「無能力者を守る理由はないと思いますが」
同期が言う
「ある」
シャオロンは一歩前に出た
「噂よりも、今ここにいる命の方が重い」
同期の表情が歪む
「そこまでして選ぶのですか」
「そんなん当たり前やん」
その瞬間、同期の魔力が限界まで収束した
衝撃
俺の体が弾き飛ばされる
視界が白く染まり、耳鳴りが響く
視界の端がチカチカしている
『、、、たいちょ、ー?』
返事はなかった
顔を覗くと 意識はなく
完全に気絶しているようだった
「、、、二対一は終わりだな」
同期の声が、冷たく響く
戦場に残ったのは俺と同期だけ
能力者と、無能力者
圧倒的な差
それでも、俺は剣を握った
能力はない
魔力も使えない
「逃げないのか」
『逃げても、、、何も変わらない』
同期が鼻で笑う
それと同時に魔力が放たれる
正面から行けば終わり
瓦礫を使い、影を走る
魔力の外側をなぞるように距離を詰める
同期の攻撃が空を切る
焦りが、声に混じる
動きは読める
踏み込み
視線
呼吸
すべて、人間のものだ
一瞬の隙に、間合いへ入る
狙うのは命じゃない
魔力を制御する腕
刃がかすめ、魔力が乱れた
同期が、はっきりと後退する
「、、、今日は引く」
その判断は、合理的だ
「覚えとけ」
視線が、鋭く突き刺さる
「噂が消えない限り お前は的になる
、、、またな」
そう言い残し同期は瓦礫の向こうへ消えた
追わなかった
いや、追えなかった
俺は倒れた隊長の元へ駆け寄る
呼吸はある
それだけで力が抜けそうになった
_その後、同期は戻らなかった
戦争が終わったあと
彼の名は記録から消えた
死亡確認も、拘束記録もない
ただ一言
“行方不明”
噂だけが、残った
真実を知っているのは
俺と、隊長だけだった