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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第38話 〚聞こえてしまった“線引き”〛
――真壁恒一視点――
廊下は、
昼休みの終わりでざわついていた。
部屋割りが決まった直後。
みんな、
それぞれのグループに戻っていく。
俺は、
教室の後ろで、
ぼーっと立っていた。
——その時。
「海翔と澪はさ、
まあ一緒でも分かるよね」
笑い混じりの声。
「うん。
あの二人は、前からだし」
少し間が空いて、
別の声が続く。
「……でも、
真壁は無いでしょ」
一瞬、
空気が止まった。
「正直、怖い」
「距離感おかしい」
「なんで同じ班なんだろ」
声は、
ひそひそ。
でも——
全部、はっきり聞こえた。
(……え?)
耳が、
じん、と熱くなる。
俺は、
その場から動けなかった。
「海翔は守ってる感じあるし」
「澪も嫌そうじゃないし」
——そこまでは、
分かる。
でも。
「真壁はさ……
違うじゃん」
その一言が、
胸の奥に落ちた。
(違う……?)
俺は、
何が違うのか、
分からなかった。
澪に優しくした。
話しかけた。
一緒がいいって言った。
それだけだ。
(……それだけなのに)
誰も、
俺の方を見ていない。
笑い声が、
遠くで弾ける。
その中心に、
俺はいない。
「聞こえちゃった?」
誰かが言って、
また小さく笑う。
俺は、
無意識に拳を握っていた。
怒りじゃない。
悲しみとも、
違う。
ただ——
理解できない不安。
(俺、
そんなにおかしいのか)
(……澪と一緒にいたいって、
思うのはダメなのか)
答えは、
誰もくれない。
教室の窓から、
光が差し込む。
明るいはずなのに、
俺の足元だけ、
影が濃くなった気がした。
その日から。
俺は、
周りを見るようになった。
……遅すぎたのかもしれない。