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一弥先輩と夏希から、結婚式の招待状が届いたのはそれから2年後だった。
素晴らしい結婚式に、私は朋也さんと2歳になった莉穂を連れて参加した。
とっても綺麗だよ、夏希――
白いウェディングドレスがこんなに似合う花嫁さんはなかなかいない。
一弥先輩のタキシード姿も素敵だ。
涙と感動、笑顔が溢れる結婚式に、参列した誰もが2人の未来を祝福した。
一弥先輩も夏希も、『文映堂』で働きながらマンションを買って、新しい生活をスタートさせた。
いつか子どもが産まれたら、莉穂と遊ばせたい。
夏希とは、これからも励まし合いながら、ずっと仲良しでいたいと思っている。
朋也さんも、一弥先輩のことを仕事面でとても信頼しているようで、大きな仕事もたくさん任せているようだ。
一弥先輩は、間違いなく出世するだろう。
これからの『文映堂』を支える重要な人材。
今まですごく努力して頑張ってきたから、認められて当然だ。
夏希から聞いたけれど、梨花ちゃんも彼氏さんと結婚したらしい。
赤ちゃんがお腹にいるみたいで、仕事を辞めて田舎に戻っているそうだ。
梨花ちゃんもママになるんだ……
あんなにキツイ性格も、きっと一弥先輩が好きだったからだろう。好きな人が誰かと仲良くしていたら、誰だって……苦しくなる。
その気持ちは、今の私にならわかる。
ただ、もう少し……優しくなれたらいいね。
素敵な優しいママになってくれたら嬉しい。
菜々子先輩は、あの事件で逮捕はされず、先輩のお兄さんが勝手に朋也さんを刺したということになった。
引越しをして、今はどこにいるのかもわからないらしい。
菜々子先輩も……
朋也さんのことを好きになって、想いが届かなくて……
梨花ちゃんと同じように、苦しかったのかも知れない。
犯罪を犯したのはお兄さん。
菜々子先輩は……お兄さんをあおってしまったことを、今はきっと反省しているだろう。
新しい人生を、しっかり……歩んでもらいたい。
そして、『文映堂』の社長、お義父さんは……
朋也さんがいるおかげで仕事もスムーズに進み、そろそろ朋也さんに社長を譲り、自分は会長になると言っている。
お義父さんも、莉穂が可愛くて仕方ないみたいで、朋也さん以上に可愛がってくれている。
甘い甘いおじいちゃん、私はそれも微笑ましく思っている。
お義父さんには、いつまでも元気でいてもらいたい。
そして、同じく莉穂を可愛がってくれている梅子さんにも……末永く元気でいてほしい。
莉穂の成長を、家族みんなで一緒に見守っていきたいから。
私と朋也さんは、夫婦として穏やかな毎日を過ごしている。
とても忙しいようだけれど、それでも、約束してくれたように、ちゃんと私を大切にしてくれている。
「恭香。来週、父さんと莉穂と梅子さんも一緒に、みんなで旅行に行こう。前に一弥君と一緒に行った旅館覚えてる? 今度、ご家族でって招待してくれたんだ」
「もちろん覚えてるよ。素敵な旅館だったもん。また行けるなんてすごく嬉しい。しかも、莉穂やお義父さん、梅子さんも一緒だなんて楽しみだね」
「そうだな。父さんも梅子さんも、喜んでくれるだろうな。莉穂が一緒ならなおさら」
「うん。莉穂は2人が大好きだからね」
「でも、1番はパパ……だろ?」
「はいはい」
こんな風に、忙しい合間を縫って家族サービスしてくれる。
それから、1ヶ月に1度は、莉穂を梅子さんに見てもらって2人でデートもしている。
朋也さんがそう決めてくれた。
デートに行く時、梅子さんに言われた。
「莉穂様は私にお任せください。この梅子、我が生命にかえても、莉穂様をお守り致します。ゆっくりと……お2人の時間をお過ごしくださいませ」
「梅子さん、本当にいつも莉穂のこと、ありがとうございます」
「いえいえ、とんでもないですよ。こうして莉穂様を見ていると、小さかった朋也様を思い出します」
「梅子さん……。朋也さんは梅子さんに心から感謝していますよ。梅子さんは自分のお母さんみたいな人だって」
「まあ……。そんなこと……。朋也様は私にとって何よりも大切な存在です。あんなに小さかった朋也様が、立派過ぎるほど立派になられ、素晴らしい女性である恭香様とご結婚された時の喜びは、この梅子、生涯忘れません。そして、可愛い莉穂様をこの腕に抱かせていただき。本当に……こんな嬉しいことはございません」
いつも大げさ過ぎるほどに、私達を大切にしてくれる梅子さん。
だからこそ、朋也さんは……とても優しい人に育ったんだ。
そんな梅子さんに、安心して莉穂を任せ、私達は月1のデートを楽んでいるんだ。
その時だけは、手をつないだりして、まるで恋人同士に戻ったみたいな気分になれる。
とても新鮮で、ドキドキする時間だ。
朋也さんの優しさは、いつも、私達家族に真っ直ぐに注がれている。