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不老不死になってしまった
昔々、魔法を使える人々が暮らす世界で大きな戦争が起こりました。
その戦争は世界中の国々を巻き込んで、沢山の人々が犠牲になりました。
そんな悲惨な戦いを終わらせるべく、国々は世界を滅ぼすほどの力を持った魔導兵器を開発していました。
そんな兵器は人々の手に負えるはずもなく暴走し、世界中を焼き尽くしてしまいました。
後に残ったのは、焼け爛れた大地と枯れた河川だけ。
そんな世界で生き残ってしまった、とある少女のお話です。
『お腹すいた・・・喉乾いた・・・』
少女は暴走した魔導兵器の近くにいたことで、たまたま使おうとしていた回復魔法と混ざり、不老不死の体になってしまっていた。
少女は何度も餓死したり干からびて死んだりしては復活し、水や食べ物が残っているところを探して彷徨い歩いていた。
爆発の後に大地に降り注いだ雨は有害な物質をふんだんに大地に叩きつけ、少女の体も蝕んでいった。
『水・・・だけど、飲んだら死んだしな・・・』
水たまりを見つけても飲むことが出来ない歯がゆさで、少女は水面に映る自分を睨みつけた。
そんな苦しい旅をどれほど続けただろうか。
少女は、地下シェルターであったであろう場所を見つけた。
中には人はおらず、綺麗なまま保存されていた。
水も高度な濾過技術で、あの水でさえ飲めるようになるようだった。
少女はそのシェルター内で細々と野菜を育て、飲水を作り、生ゴミで虫を繁殖させて生き延びた。
長い年月が経ち、地面に草が生え揃い、草原に木々が生えた。
少女は未だ人間と会っていないことを疑問に思い、シェルターから出ることを決意した。
少女はまた、途方もない旅に出ることにしたのだ。
少女は歩いて歩いて歩き続けた。
数年が経つと、小動物の姿を見かけることが増えた。
数十年が経つと、大型の肉食獣に追いかけ回される経験も増えた。
数百年が経ち、漸く人間の集落を見つけた。
しかし、その人間達は戦争が会ったことを知らず、未知の力を持った少女を怖がって追い出した。
少女はやっと見つけたと思った同胞に拒絶され、森の中で1人で泣いていた。
少女はそれから暫く森の中で暮らした。
彼女を拒絶した人間達はもっと良い暮らしを求めて移動し、残された物は少女がありがたく頂いて生活の足しにした。
少女は1人になった。
けれど、動物たちと話をして、畑の面倒を見ながら暮らすのは悪くなかった。
少女は生活が安定すると、自分の体について色々調べることにした。
不老不死になった以外にも、死の気配を感じたり、死ぬ場所が分かったりしたことがあったからだ。
何度も何度も危険な場所に赴き、肉食獣に喧嘩を売って、漸く彼女は自分の能力を把握することができた。
まず、死んでも数時間で生き返ること。
死んだときの状況で、時間が変わることも分かった。
次に、死ぬ可能性のある場所を感知できること。
例えば、見づらい崖や毒蛇のいる茂みなどの場所が分かる。
そして、死の気配を感じられること。
身の危険が迫ると、それを感じ取れた。また、仲の良かった動物たちの死の気配も感じ取れた。
最後に、それらを利用して死を避けられること。
少女はその能力を応用して、毒のある物を食べざるをえないときは、ギリギリ死なない量で留めた。
また、確実に死ぬと分かったら、より楽な方法で死んだ。
そうやって出来る限り楽な死に方と、死なない方法を模索して過ごしていた。
そんな孤独な少女は、ある日、家の前に黒猫がいるのを見つけた。
少女は新しい友達になってくれるかも知れない、と干し肉を片手に近づいた。
黒猫は咥えていた何かを落として干し肉にかぶりつき、撫でさせてくれた。
満足したらしく去っていった黒猫が置いていった金の指輪を拾い、少女は面白そうに笑った。
食べ物以外のプレゼントを貰うなんて、千年ぶりだったから。
少女はその指輪を嵌めてみることにした。
そうして、少女は異世界で悪魔執事達の主となったのであった。