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うみねこ
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放課後の教室には、夕方特有の冷えた空気が漂っていた。
窓ガラスの向こうで赤く染まった雲がゆっくりと流れていくのを見つめながら、うりは自分のこめかみをそっと押さえた。
昨日、ゆあんと廊下で交わした言葉の欠片が、頭の中でチリチリと音を立てて疼いている。
(あのとき、ゆあんくんは「お前も思い出しているのか」って言った……)
それは偶然の一言なんかじゃない。
ゆあんも自分と同じように、遠い過去の記憶を抱えている。
それも、ただの夢物語なんかではなく、生々しい傷跡を伴った記憶を。
「うり、どうした? またボーッとして」
声とともに、目の前に温かいミルクティーが差し出された。
顔を上げると、少し心配そうに眉を寄せたゆあんが立っていた。
その整った顔立ちは、かつて泥にまみれた戦場で、ボロボロになりながら自分を守ろうとしてくれた青年と重なって見える。
「……ううん、なんでもないよ。ただ、少し考え事をしててさ」
「考え事?」
ゆあんはうりの隣の席に腰を下ろし、手元のコーヒーのプルタブをプシュッと開けた。
その何気ない仕草ですら、なぜか胸の奥を締め付ける。うりは意を決するように、ゆっくりと口を開いた。
「ねえ、ゆあんくん。……俺、思い出したの。古い病院のベッドとか、焼けたコンクリートの匂いとか……あと、ボロボロの軍服を着た君が、俺の名前を叫んで泣いていた景色も」
その瞬間、ゆあんの動いていた手がピタリと止まった。
缶コーヒーを持つ指がわずかに白くなり、息が詰まったように彼の肩が大きく揺れる。
ゆあんはゆっくりと顔を上げ、潤んだ瞳でうりを見つめた。
そこには、隠しきれなかった切なさと、ずっと一人で耐えてきた恐怖が溶け合っていた。
「……全部、思い出したのかよ」
震えるゆあんの声に、うりは小さくうなずいた。
「うん。……怖かった。周りは全部燃えていて、俺たちは敵味方に引き裂かれて、もう二度と会えないって分かっていたから。あのとき、ゆあんくんの手がどんどん冷たくなっていくのが、本当に……」
言葉を最後まで紡げず、うりの目からぽろりと涙がこぼれ落ちた。
次の瞬間、耐えきれなくなったように、ゆあんは立ち上がり、うりの身体を力強く引き寄せて自分の胸の中に閉じ込めた。
ぎゅうと締め付ける腕は少し震えていて、前世で抱きしめられなかった後悔をすべて埋め合わせようとするかのように切なかった。
「ごめん……ごめん、うり。あのとき、お前を一人ぼっちにして、俺だけ生き残っちまった。何度も夢で見たんだ。お前が消えていくあの瞬間を繰り返す夢を……っ」
ゆあんの声が掠れている。
現代の穏やかな教室の中で、二人は過去の戦火のなかに取り残されたまま、ようやくお互いのぬくもりを確かめ合うようにしがみついた。
「もう泣かないで、ゆあんくん。ほら、今こうして隣にいるよ」
「……うん。もう絶対に離さない。二度とうり
を一人になんてしないから」
教室を包む夕闇の中で、二人は過去の悲劇の記憶を優しく抱きしめ合いながら、現代の温もりを深く確かめ合うのだった――。
次回♡15
コメント
1件
第3話、めっちゃ沁みました……😢💘 うりくんが「焼けたコンクリートの匂い」「軍服の君が名前を叫んでた」って話すシーン、一気に前世の重さが押し寄せてきて、胸がぎゅっとなったよ。ゆあんくんの「ごめん、俺だけ生き残っちまった」って声、震えてたんだろうな……。ずっと一人で抱えてた後悔を、ようやく伝え合えたのが尊すぎて泣ける。 こめさんの描く「記憶の輪郭」って感じの、ぼんやりしてるのに確かな痛みがある表現、すごく好きです。続き、楽しみにしてるね🌙🤍