テラーノベル
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朝が来ると、いるまは必ず部屋に顔を出す。
今日もノックなしでドアが開き、黒いコートを翻した男が無言で現れた。
🎼📢「飯できてる」
🎼🌸「……おはよう、いるま」
その一言に、いるまの足がぴたりと止まる。
何でもないように聞こえる、けれど――初めてだった。
らんの方から、いるまに“挨拶”をしたのは。
🎼📢「……ああ。おはよう、らん」
食卓に並んだのは、焼きたてのトーストとスープ。
以前は口をつけるだけだったらんも、今日はスプーンをきちんと握っていた。
🎼📢「寝れたか?」
🎼🌸「うん。なんか……変な夢は見たけど」
🎼📢「どんな?」
🎼🌸「いるまが、白衣着てて……注射器持って追いかけてきた」
🎼📢「それはホラーだな。絶対夢でもやりたくねぇ役だわ」
らんは吹き出して、初めて声に出して笑った。
🎼🌸「……ねぇ、いるまって、毎日こんなごはん作ってんの?」
🎼📢「あ? まさか。俺が飯作んのは、お前だけだよ」
🎼🌸「えっ……なんか、それ……ちょっと、特別っぽい」
🎼📢「特別だよ。お前は、俺の“初めて”だからな」
🎼🌸「……変な意味に聞こえるって」
🎼📢「いい意味だよ」
冗談みたいなやりとりに見えて、それでもらんの頬がほんのり赤く染まる。
数時間後、リビングでふたり並んで映画を観ていた。
らんが選んだのは、古い洋画のラブロマンス。
途中、ヒロインがヒーローの手を取るシーンで、らんがぽつりとつぶやく。
🎼🌸「……手って、こんなに大事なんだね」
🎼📢「ん?」
🎼🌸「だって、誰かに手を握られたときの安心感ってさ……すごい、あったかくなる」
いるまは、その言葉に視線を落とした。
この数日で、らんは確かに変わった。
心を開きはじめている。
笑うようになった。自分の話をするようになった。
……けれど、それが“恋”になるには、もう少し時間が必要だ。
過去の傷跡が、まだ彼の奥に根付いているから。
だから今は、触れすぎない。
無理に近づかない。ただ、そばにいる。
そんな静かな決意のまま、いるまは隣にいるらんの肩にもたれかける細い動きを、黙って受け入れた。
🎼📢「……お前の声が、俺には一番効くんだわ」
🎼🌸「……なにそれ、意味わかんない」
🎼📢「わかんなくていい。今は、それでいい」
もうすぐ。
もう少ししたら、触れてもいいと思える日が来る。
その時、初めて“恋”になるんだ。
だから――焦らない。
これは、ただの監禁なんかじゃない。
ちゃんと、二人で育てていくものだ。
静かな午後の部屋。
寄り添うふたりの間に、優しい光が差し込んでいた。
コメント
1件
主様お疲れ様です✨️💜🩷尊すぎます✨️可愛いすぎます✨️続き楽しみです✨️無理しない程度に投稿頑張ってください