テラーノベル
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夜。雨が降っていた。
鉄格子の窓を濡らす音が、部屋に静かに響いていた。
その音が、どうしてか胸の奥にしみる。
らんは、いるまの黒いワイシャツの袖をつまんだまま、黙っていた。
🎼📢「……なんか、あった?」
いるまの声は、いつもより少しだけ低かった。
問い詰めるんじゃなくて、包み込むみたいな声。
しばらく黙ってから、らんはぽつりと話し始める。
🎼🌸「……小さいころさ。ほんとは、絵を描くのがすごく好きだったの」
🎼📢「へぇ。らんの絵、ちょっと見てみてぇな」
🎼🌸「でも……家に画材なんてなかったし、親に“そんなの描いても意味ない”って、ぐちゃぐちゃに破かれて……」
そこまで言って、らんの声が詰まる。
膝の上で握りしめた指先が、かすかに震えていた。
🎼🌸「だから、いつの間にか……“描きたい”って思うこと自体、消えちゃってて」
🎼📢「……」
🎼🌸「ほんとは、なにかになりたかったのに……誰かに見てほしかったのに……そんな気持ち、消したほうが楽だった」
その言葉に、いるまは何も言わずにそっと隣に腰を下ろした。
言葉で癒せるような傷じゃないことを、彼はよく知っていた。
🎼📢「らん」
🎼🌸「……なに」
🎼📢「ここでは、好きなもん描いていい。描けって命令でもいいぜ」
🎼🌸「ふふ、無理やりだな、それ」
🎼📢「お前が笑うなら、それでもいい」
ちょっとした沈黙のあと、らんが小さくつぶやく。
🎼🌸「……でも、不思議だな。
ここに閉じ込められてるのに、
『ここにいてもいいのかも』って、思うようになってる自分がいて……怖いのに」
🎼📢「怖ぇままでいいよ。
でも、ちゃんと覚えとけ。お前を“ここにいていい”って思わせたのは、俺だ」
🎼🌸「……うん、知ってる」
カーテンの隙間から、微かに月の光が差し込んだ。
いるまはゆっくりとらんの手に触れる。今度は、拒まれなかった。
握った手は細くて、だけどちゃんと温かかった。
🎼📢「……明日、出かけようか」
🎼🌸「え?」
🎼📢「ずっとこの部屋じゃ息詰まるだろ。車出す。お前が怖くなければ、少しだけ外に連れてく」
その提案に、らんは目を見開いたまま黙っていた。
“自由”という名の外の世界に、一歩踏み出してもいいのか――迷いが残る。
でも、その時。
自分から、そっといるまの手を握り返していた。
🎼🌸「……いく。行ってみたい。……いるまとなら」
その一言に、いるまの目の奥がふっとゆるんだ。
“この子は、もう俺を怖がってはいない”
その事実が、何より胸を温かくした。
外の世界で何があるかわからない。
でも――二人でなら、大丈夫な気がする。
そう思えた夜だった。
コメント
3件
書き方上手すぎて泣く(?) 続き楽しみ!!
まじ神…尊すぎる…! もう出かけるとか監禁されてたのに外出れるとか最高かよ!主さん天才!神! 続き待ってる!