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夜、静かな部屋。ふわりと香るアールグレイの香り。
カップを持つ手がまだ少し震えるのを、らんは自分でも気づいていた。
ベッドに腰を下ろし、毛布を膝にかけていると、いるまが小さなテーブルに湯気の立つカップを二つ置いた。
🎼📢「眠れないんだろ」
🎼🌸「……なんで、わかるの」
🎼📢「何日も一緒にいれば、わかる。お前、寝るときいつも体強張ってる。呼吸も浅いし」
静かで、少し低い声。でも、冷たくはなかった。
らんは黙ってカップを手に取る。中身は、温かいミルクティー。
砂糖が多めで、やさしい味だった。
🎼🌸「……いるまって、さ」
🎼📢「ん」
🎼🌸「なんで、俺のこと見てたの?」
一瞬だけ、いるまの表情が止まる。
それでも彼は、ゆっくりと答えた。
🎼📢「……ガキの頃、俺にも弟がいた。お前と、少し似てたんだ」
🎼🌸「……弟?」
🎼📢「小さくて、よく笑ってて。……でも親に捨てられて、俺もそいつも施設育ち」
🎼🌸「……」
🎼📢「そいつ、笑ってるくせに誰にも頼らなかった。俺以外のやつを、全員信じてなかった」
🎼📢「ある日、そいつ……俺に何も言わずに、首吊って死んだ」
静寂が落ちた。
ミルクティーの香りの中で、らんはただ、じっと目の前の男の目を見ていた。
そこに浮かんだ、色のない痛み。
🎼📢「だから、放っとけなかった。お前見てると……あいつに似てるから。笑ってるのに、どっか遠く見てんの」
🎼📢「俺は、あの時、誰にも言えなかった。『やめろ』とも、『死ぬな』とも言えなかった」
🎼📢「だから今は……全部、言うようにしてる」
🎼📢「お前には、生きててほしい。俺が無理矢理でも、引き止める」
目の奥に、ほんの一瞬だけ光が差す。
らんの中で、何かが揺れた。
🎼🌸「……あのさ」
🎼📢「ん?」
🎼🌸「……その時、誰かが“いてくれたら”って思った?」
🎼📢「……思った」
🎼🌸「……それ、ちょっとだけ、わかるかも」
らんの声は細くて、震えていた。
けれど、その指が、そっといるまの袖をつかんでいた。
🎼📢「……触れても、いいか?」
少し間をおいて、らんがうなずく。
いるまの手が、そっとらんの手を握る。
細くて、冷たくて、だけど確かにそこにある命のぬくもり。
🎼📢「お前の手、あったかいな」
🎼🌸「……違うよ。あったかいの、そっちのほう」
その瞬間、いるまの目が少し揺れた。
――この子は、俺の手を“拒絶しない”でいてくれている。
それだけで、救われた気がした。
🎼📢「……じゃあ、もう少しだけ、ここにいろよ」
🎼🌸「……うん」
それは、少しだけ差し込んだ灯りのようだった。
依存でも、支配でもない――
“必要とされる”ことが、ただ、嬉しかった。