テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

龍の中のラプソディ

一覧ページ

「龍の中のラプソディ」のメインビジュアル

龍の中のラプソディ

4 - episode4-俺の手は、もう汚れてるから-

♥

209

2025年07月24日

シェアするシェアする
報告する

夜、静かな部屋。ふわりと香るアールグレイの香り。

カップを持つ手がまだ少し震えるのを、らんは自分でも気づいていた。


ベッドに腰を下ろし、毛布を膝にかけていると、いるまが小さなテーブルに湯気の立つカップを二つ置いた。


🎼📢「眠れないんだろ」


🎼🌸「……なんで、わかるの」


🎼📢「何日も一緒にいれば、わかる。お前、寝るときいつも体強張ってる。呼吸も浅いし」



静かで、少し低い声。でも、冷たくはなかった。


らんは黙ってカップを手に取る。中身は、温かいミルクティー。


砂糖が多めで、やさしい味だった。



🎼🌸「……いるまって、さ」


🎼📢「ん」


🎼🌸「なんで、俺のこと見てたの?」



一瞬だけ、いるまの表情が止まる。


それでも彼は、ゆっくりと答えた。


🎼📢「……ガキの頃、俺にも弟がいた。お前と、少し似てたんだ」


🎼🌸「……弟?」


🎼📢「小さくて、よく笑ってて。……でも親に捨てられて、俺もそいつも施設育ち」


🎼🌸「……」


🎼📢「そいつ、笑ってるくせに誰にも頼らなかった。俺以外のやつを、全員信じてなかった」


🎼📢「ある日、そいつ……俺に何も言わずに、首吊って死んだ」



静寂が落ちた。


ミルクティーの香りの中で、らんはただ、じっと目の前の男の目を見ていた。


そこに浮かんだ、色のない痛み。


🎼📢「だから、放っとけなかった。お前見てると……あいつに似てるから。笑ってるのに、どっか遠く見てんの」


🎼📢「俺は、あの時、誰にも言えなかった。『やめろ』とも、『死ぬな』とも言えなかった」


🎼📢「だから今は……全部、言うようにしてる」


🎼📢「お前には、生きててほしい。俺が無理矢理でも、引き止める」



目の奥に、ほんの一瞬だけ光が差す。

らんの中で、何かが揺れた。



🎼🌸「……あのさ」


🎼📢「ん?」


🎼🌸「……その時、誰かが“いてくれたら”って思った?」


🎼📢「……思った」


🎼🌸「……それ、ちょっとだけ、わかるかも」



らんの声は細くて、震えていた。

けれど、その指が、そっといるまの袖をつかんでいた。



🎼📢「……触れても、いいか?」


少し間をおいて、らんがうなずく。



いるまの手が、そっとらんの手を握る。


細くて、冷たくて、だけど確かにそこにある命のぬくもり。


🎼📢「お前の手、あったかいな」


🎼🌸「……違うよ。あったかいの、そっちのほう」



その瞬間、いるまの目が少し揺れた。


――この子は、俺の手を“拒絶しない”でいてくれている。


それだけで、救われた気がした。



🎼📢「……じゃあ、もう少しだけ、ここにいろよ」


🎼🌸「……うん」



それは、少しだけ差し込んだ灯りのようだった。


依存でも、支配でもない――

“必要とされる”ことが、ただ、嬉しかった。


龍の中のラプソディ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

209

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚