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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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その日はなかなか寝付けなかった。



ベッドの上に転がり、網戸越しに空を見つめる。



(私だって……拓海くんが好きなんだけどな……)



優しくて、頼りになる大好きな人。



だけど私の「好き」と、拓海くんの「好き」は違うとわかっている。




【ずっと前から、澪のことが好きなんだよ】




耳の奥で拓海くんの声がして、胸が狭くなった。



いつからだったんだろう。



どうして気付かなかったんだろう。



そんなことばかり考えるけど、考えても答えなんてでてこない。



私は壁時計に目を移した。



午前二時でもまったく眠くならないなんて、今日は眠れないかもしれない。



喉がかわいた私は、寝静まっているみんなを起こさないように階段を降りた。



台所の豆電球の明かりを頼りに、暗い廊下を歩く。



だけど細い声が聞こえた瞬間、足が止まった。






『あんた、澪のことどう思ってんの?』



台所から拓海くんの声がした。



それを聞いて、拓海くんの話し相手がだれかを悟る。



『……どうって?』



レイの声を耳にした途端、心臓が大きく波打った。



『とぼけんなよ、俺が言いたいことわかってんだろ』



ふたりのやりとりに、焦りが加速する。



(……引き返さなきゃ)



そう思っても、足が動こうとしない。



レイが私をどう思っているか。



知りたくないのに、心のどこかで知りたかったからだ。



『……ミオのことは、よく世話をしてくれる、かわいいホスト。


 そう思ってるよ』



耳にした瞬間、構えていたのがばかみたいなくらい、なにも感じなかった。



だけどじわじわと、胸の奥を握りつぶされるような苦しさが襲ってくる。







私は無意識に胸を押さえ、何度もゆっくり息を吐いた。



『……それならいいけど。


うちに滞在している間、澪に変なことするなよ。

あんた見た目もいいし、人当たりもよさそうだけど、どうみても胡散臭いんだよ』



声を残して、拓海くんの足音が近付いてくる。



慌てた私はリビングの壁の裏に隠れ、息をひそめた。



『タクミ』



両手で口を覆った途端、レイが拓海くんを呼び止めた。



『ミオをそう思ってるのは本当だけど。


 タクミの懸念も、たぶん当たりだよ』



私のすぐ後ろで拓海くんが足を止めた。



『……あんた、自分が言ってることわかってんの?』



苦々しい問いに、レイは答えない。



重くて長い沈黙の後、足音が遠ざかっていく。



拓海くんが階段をのぼり始めると、私は緊張の糸が切れたように、両手の隙間から細い息を吐き出した。






(どういうこと……)



心臓が跳ねまわって、息をするのも苦しいくらいだ。



冷蔵庫のあく音がする。



レイはなにかを飲んだ後、台所をでてきた。



通り過ぎるのを待っていると、ふいに気配が止まり、彼が廊下からこちらを覗き込んだ。



目が合った瞬間、レイは心底驚いた顔をした。



対する私は、心臓が飛び出しそうになった。



『人の気配がするなと思ったら……。


 ここでなにやってるの』



呆れた息をつかれ、さらに気が動転する。



『ミオ?』



『……お、お茶を飲みに……』



言った理由を、目を眇めたレイが信じたとは思えなかった。



けれど短く相槌を打ち、レイはなにも言わず階段をあがっていく。



(もう……なに……)



私の寿命が縮まったら、絶対にレイのせいだ。



二階のふすまが閉まったと同時に、膝の力が抜ける。



オーバーヒート寸前の頭を抱えて、私は壁伝いにしゃがみこんだ。


















シェア・ビー ~好きになんてならない~

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