神域――それはまるで神殿のように壮大な建築群の中心に位置する、高層ビルの屋上庭園だった。空には雲一つなく、青空が広がる。花々が咲き乱れる中、薄緑の芝生が広がり、優雅に流れる噴水がキラキラと輝いている。
その中心に立つ一人の男。零――神域のリーダー。彼は白いスーツに身を包み、気だるそうに教皇の古い写真を眺めていた。
「教皇様、教皇様ってさ…」
零は写真を指先でつまみ、肩をすくめる。
「まだこんな化石みたいな男に怯える奴がいるんだよな。笑っちゃうよ。」
その言葉とともに、写真をくしゃくしゃに丸めると、一世紀前の遺物であるかのように無造作に捨てた。だが、それでは飽き足らず、零は足元のゴミ箱から写真を拾い上げる。
「破るほうが楽しいな。」
ニヤリと笑いながら、写真をゆっくりと裂いていく。教皇の顔が紙片となって空中に舞い散る。
「さあ、次はどんな手を打ってくるのか楽しみだよ、教皇さん。」
零が屋上の噴水の縁に腰を下ろし、空を見上げると、突如として風が強まり、雲が集まり始める。
「…?」
彼が眉をひそめたその瞬間――
突如、零の目の前に一人の影が立つ。まるで風とともに現れたかのように、威厳に満ちたその姿。教皇だった。
「久しいな、零。」
教皇はシンプルな黒いマントを纏い、その背中を真っ直ぐに伸ばしていた。年齢を感じさせる銀髪に鋭い瞳。零が破り捨てた写真そのままの姿だが、現実の教皇は写真以上に圧倒的な存在感を放っている。
零は軽く口笛を吹きながら、立ち上がった。
「これは驚いた。屋上庭園にまで顔を出してくれるとは。歓迎すべきか、それとも警戒すべきか迷うな。」
教皇は一歩ずつ零に歩み寄る。その足取りは重く、まるでその場の空気を支配するようだ。
「警戒するべきは私ではない、お前の野望だ。」
零は肩をすくめて笑う。
「相変わらず説教好きだな。僕が君の大事な理想を壊すってわかってるんだろ?」
「理想は壊されても蘇る。しかし、お前が築こうとしているものは滅びる。」
教皇の言葉には力強さがあった。それは単なる予言ではなく、信念そのものだった。
零はその言葉に対して、手を広げて芝居がかった仕草をする。
「滅びるって? それは面白い冗談だ。さすが教皇様、エンターテイナーだな。」
だが、教皇は冷ややかに零を見つめ続ける。
「お前の愚を止めるために、ここにいる。そして狩り手たちもまた、お前の計画を阻止する。」
零はその言葉に小さく鼻を鳴らす。
「狩り手たち? 寄せ集めの連中か。僕の計画の足元にも及ばないよ。」
教皇は静かに微笑む。だが、その笑みには冷たい威圧感が込められていた。
「では、試してみるがいい。お前が本当に支配できるかどうか――。」
零と教皇が向き合う中、屋上庭園は不穏な緊張感に包まれた。まるで嵐の前の静けさのように、花々が風に揺れ、噴水の水しぶきが光を反射する。
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