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きっとそんな風になるであろうと実際に話しかけてみた。ところがろくに返事は返ってこないし、目を細めて睨まれるというような始末だ。1週間が過ぎてもしばらくの間はそんな感じだった。でも俺は構わす話しかけたし、ゆずきが少しでも学校に来るのが楽しくなるように気を配ったりもした。そうこうしている内に、ゆずきは少しずつ俺に心を許していった。話しかければ笑みがこぼれるようになったし、会話も出来るようになっていった。話していて気付いたというか、初めから薄々感じていたことだけど、ゆずきは他の女子生徒たちと何も変わらない普通の女の子だった。確かに見た目は不良っぽいし、いつも機嫌が悪いというか怒っているような雰囲気を出してはいたけど、それが彼女の自然なスタイルだった。悪気など全くなかった。ただ誤解されやすいというのは間違いなかった。こんなにクールで近寄り難く、人を寄せつけないオーラを常に出しているように見えるけど、実は意外に人見知りで少しばかり恥ずかしがり屋なだけだった。目を細めて睨んでいるように見えたのは、極度の近眼だったらしく、知らず知らずの内に目を細めて見るのが癖になっていたらしい。それがわかったところで、ゆずきに近付こうとする生徒は殆んどいないだろう。でも、俺とゆずきの距離は縮んでいったし、仲良くもなった。そんな俺とゆずきの関係だけど、詳しいことは言いたくない。1つだけ言えるとすれば、今では親友と呼べる仲だということくらいだ。
そして何も変わらないまま月日は流れ、中学を卒業した俺とゆずきは同じ高校に進学した。偶然にも俺とゆずきは1年、2年と同じクラスになった。また、新天地で交遊関係を築けるチャンスだったのに、ゆずきは相変わらずのオーラで全く人を寄せつけなかった。そんな中、2年になった俺とゆずきの前に運命というか因縁の相手が現れた。マナだった。マナは誰も近付こうとしないゆずきに平気で近付き話しかけていた。空気の読めなさ加減と人懐っこさはマナの得意分野であるけど、ゆずきに話しかけるとは大した度胸だ。きっとマナには周りの人間が持っているゆずきの印象とは違って見えていたのかもしれない。とは言えど、マナのゆずきに対する接し方は度を越えていた。。だからそんなマナに対して、ゆずきは冷たい態度であしらっていた。たぶん嫌いとかではなかったと思うけど、今までにゆずきの周りにはいないタイプの人間だったから戸惑っていたのかもしれない。そんな2人を俺は遠くから黙って見守っていた。何故なら、ゆずきには意外にこういうタイプの人間の方が上手く行くような気がしたからだ。すると初めのうちは、ゆずきは怪訝そうな態度で接していたが、日が経つにつれ態度が変わっていった。少しずつではあるが、笑みが零れるようになっていたし、マナを見つめる眼差しが優しくなっていた。そして驚いたことに、いつしかゆずきはマナを受け入れ、かわいがってやるようになっていた。頭を撫でてやる場面をよく見た。俺は思った。この2人を見ていると、まるでご主人さまの回りをキャンキャン鳴きながらまとわりついている仔犬と飼い主のようだと――。つまり友達というよりは主従関係のようだった。マナからしたらゆずきは一緒にいて楽しいし頼れるお姉さんのような存在だったと思う。