「……んぅ……」
華はカクテルのグラスを握ったまま、テーブルに突っ伏してしまった。
律は慌ててグラスを取り上げ、ため息をつく。
「……だから言ったのに」
支払いを済ませて店を出ると、夜風が酔いで火照った華の頬をなでた。
律は彼女の腕を自分の肩に回し、歩幅を合わせて歩き出す。
「桜坂さん、しっかりしてください」
「……ん〜……律さぁん……」
華は半分眠ったような声で彼の名を呼ぶ。
律の胸に重みが預けられ、鼓動が一瞬跳ねた。
(……ほんと、放っておけない人だ)
呆れ半分、愛しさ半分。
律は華を支えながら、静かな夜道を歩き続けた。