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雪音水綺@全垢フォロ中
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専務?いきなり潤がそんなことを言ったのが気になる。
潤の言葉も女性たちの話の内容も気になるけれど、今は聞けない。
それよりも、そっと出ていくべきか。
それとも女性たちが出て行ってから──と考えていると、「そういえば、話は変わるんだけども。氷室知佳ってさぁ」という声に、ぴくっと私と潤の肩が同時に揺れた。
潤とぱちっと視線が合って、お互いに女性たちの会話へ耳を傾けてしまう。
「あぁ、なんか急に色気づいた子?」
「そう、やたらと男子ウケがいい、ダルい女。今度営業部のメンツと合コンするんだけどさ、男の幹事が『氷室さんを呼んでくれ〜』ってうるさいの」
「なにそれ。大体、あの子の仲のいい同僚なんて、労務のジジババたちでしょ?」
「そうそう。だから誰がそんな女呼ぶかよって断ったらさ、『氷室さん呼んでくれたら、なんとかして巴さん引っ張ってくる!』って言うわけよ!」
「ヤバッ。巴って、ウチの法務の巴潤っ!? だったら、私もその合コン参加したい!」
キャアキャアと騒ぐ声に思い出した。
そうだ、この声。以前に潤をランチに誘っていた人たちだ。
それにしても会話の内容に驚きすぎて、私や労務の先輩たちへの失礼な物言いに言葉が出てこない。
唖然として何の感情も湧かなかった。
いや、違う。とにかくこの場から早く出たいという、ざらついた気持ちが溢れた──そのとき。
潤の「醜い」と言う、酷く冷たい声が耳に届いた。
その声に反応して潤の顔を見ると、ぞくっとするほど冷酷な表情をしていた。
私が驚き反応する前に潤が「知佳は先に行ってて」と、短く言った。
声を上げる間もなく、潤は私から離れた。
潤は自ら、近くの棚に置いてあった紙束をわざと下に落とす。
ドサドサッと崩れ落ちる紙束。
その音で、棚の向こう側にいる人たちのお喋りがピタッと止まった。
そして潤は無言で出口のほうへと指をさしたまま、「あぁ、やってしまった。片付けないと」と、わざとらしく大きめな声を上げた。
棚の向こう側で、女性たちがそろりとこちらへと動く気配がした。
私はそれを察知して、弾かれるように出口へと向かい、備品室を飛び出た。
備品室を出ても、足の速度を緩めなかった。そのまま階段を使い、下のフロアへと戻る。
「は、はぁっ……」
階段をダダッと駆け下りる。
ひょっとしたら女性たちに私の後ろ姿くらいは見られたかもしれないけれど、潤がきっとなんとかしてくれるだろう。
大丈夫──と思うのに、それとは別に妙な胸騒ぎがした。
頭の中で、女子社員たちが喋っていた会話がリフレインする。
ハッとあることに気がついて、踊り場で立ち止まった。胸がキリキリする。
「はぁ……インフルエンサーの『ウエハラ』さんって、まさか……潤が言っていた専務──上原専務と何か関係あるの?」
二つの『ウエハラ』という名前が、混乱する頭の中を駆け巡る。
上役の名前を全員覚えているわけではないが、経営層クラスの名前は把握していた。
そのなかに『上原』という名前は、上原専務のみだ。
潤は結婚を上役に進められたと言っていた。
そして私と結婚して、その上役に結婚報告をして話はなくなったと言っていたが……
「私は、その上役が誰かを知らない」
知らされていないのは、潤から『知佳に余計な心配をかけさせたくない。もう終わったことだから』と言われていたからだ。
本人がそう言うのなら、それ以上踏み込まないほうがいいと思ったから、今までは気にしていなかった。
胸に手を当てながら深呼吸をして、ゆっくりと階段を降りる。
コツンコツンと階段を降りながら、言葉が口に出る。
「ウエハラなんて珍しい名前じゃない。インフルエンサーの『Uehara』さんと専務の名前は関係ない。偶然よね」
否定した瞬間に『Uehara』さんの、あのメッセージが思い浮かぶ。
『──最近ハイスペのイケメンと結婚できそうになったのに、話が流れてしまった。えーん。悔しいっ! 逃してたまるかっ』
と言っていたのは実は──
「…………」
潤の冷たい表情は一体何を考えていたのか、わからない。
潤は備品室にいた、あの女性達に何か言ったのだろうか。
それとも単純に、私だけを備品室から逃そうとしていたのか。
私にコンタクトを取った来た『Uehara』さんとは、本当は一体誰なのか。
考えが何一つ、まとまらなかった。
胸騒ぎと言いしれぬ不安。
今になって女性社員達が言っていた私への陰口が重く心にのし掛かり、部署へとトボトボと戻るのだった。
コメント
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うわ、この展開…読んでて胸がざわつきました。知佳が聞いてしまった陰口と「ウエハラ」の一致、そして潤のあの冷たい表情。伏線がじわじわ効いてきますね。特に「Uehara」のインフルエンサーと上原専務、同じ名字なのが気になりすぎます。潤がどんな対応をしたのか、次が気になる終わり方でした。