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ゆ♨️
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ゆ♨️
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FORSAKENの泥と血の臭いが、辺り一面を支配していた。
ついさっきまで存在していたSWAPSAKENの青空も。
穏やかな風も。
誰も傷つかない、優しい世界も。
すべてが音を立てて崩れ落ちていく。
その崩壊に引きずられるように――。
「ガッ……!」
シクサーの身体が大きく跳ねた。
「……あ……?」
胸元を押さえる。
「ぐ……あ……あぁぁぁぁぁッ!!」
突然、絶叫が響き渡った。
シクサーはその場に倒れ込み、自分の胸を掻きむしる。
「や……やめろ……!」
身体の内側で、何かが蠢いている。
「嫌だ……!」
皮膚の下を、黒い何かが這い回る。
肉が震える。
骨が軋む。
そして――。
「グ…ッ!」
メリ……ッ
身体そのものが、異形へと書き換えられていく。
華奢だった腕が膨れ上がる。
肩幅が広がる。
背中が盛り上がり、黒く濁った異形の筋肉が次々と形を成していく。
「やめろぉぉぉ!!」
シクサーの叫びが響く。
しかし、世界は止まらない。
バリッ!!
黒い服が裂けた。
その隙間から突き出したのは――。
巨大な爪。
鋭く。
長く。
まるで肉体そのものが殺戮のために作り変えられていくような、異形の爪だった。
「いやだ……!」
頭部から伸びていた角が、さらに禍々しく成長する。
瞳が赤く染まっていく。
理性を押し流すような、深い血の色へ。
「ヌーブ……!」
シクサーが叫ぶ。
「やめろ……!」
「…………」
「止めろ、ヌーブッ!!」
その声には、怒りではなく――。
恐怖があった。
「俺は……!」
シクサーは震える手を見つめる。
その指先から伸びる、巨大な爪。
「俺は……また、あの怪物に戻ってしまう……!」
「…………」
「お前を傷つける……あの忌々しい怪物に……!」
必死に抗う。
身体を押さえ込む。
自分自身を拒絶する。
けれど――。
SWAPSAKENは、もう存在しない。
優しい世界の法則は崩壊した。
代わりに流れ込んできたのは――。
本来のFORSAKEN。
そこでは、シクサーは「弱いサバイバー」ではない。
彼は――。
怪物だった。
「グ……アァァァァッ!!」
最後の叫びとともに。
シクサーの身体が大きく跳ねる。
そして――。
静かになった。
「…………」
そこに立っていたのは。
先ほどまでの華奢なサバイバーではなかった。
巨大な身体。
異形の筋肉。
禍々しく伸びた角。
鋭い爪。
そして――。
赤く染まった瞳。
かつてFORSAKENを震撼させた、恐ろしい怪物。
guest666。
「…………」
怪物は、ゆっくりと顔を上げた。
その瞬間――。
「……あ」
今度はヌーブの身体が揺らいだ。
「え……?」
視界が下がる。
いや。
違う。
身体が――縮んでいる。
巨大だった腕が細くなる。
重かった身体が軽くなる。
手にしていた長剣が、まるで存在そのものを否定されるように消えていく。
「えっ……ちょっと待って……?」
ヌーブの声が裏返る。
キラーとしての力が剥がれ落ちていく。
そして。
「…………」
気がつけば。
そこに立っていたのは――。
青い服。
緑のズボン。
そして、見慣れた金髪。
ゲームが下手くそで。
戦う力もなく。
誰かに追いかけられれば、全力で逃げるしかない。
「ただのサバイバー」に戻ったヌーブだった。
「…………」
ヌーブは自分の手を見る。
細い。
小さい。
弱い。
「……そっか」
立場が――。
戻った。
キラーとサバイバー。
追う者と。
追われる者。
そして。
ヌーブの前には――。
「…………」
巨大な怪物が立っていた。
guest666。
かつて自分を打ち破り。
自分の心を壊し。
絶望の底へ叩き落とした存在。
あの時と同じ。
圧倒的な力。
逃げても逃げ切れない。
抗っても、到底敵わない。
今のヌーブなら――。
一撃で終わる。
「…………」
普通なら。
恐怖する。
逃げる。
絶望する。
けれど――。
「……あは」
ヌーブの口元が、ゆっくりと持ち上がった。
「……あはは」
笑っている。
恐怖ではない。
嬉しそうに。
まるで、ずっと探していたものを見つけたように。
「…………」
黒いキャップの陰から覗く瞳が、歓喜に揺れる。
そして――。
「おかえり」
ヌーブは、目の前の怪物を見上げた。
「……シクサー」
guest666が、ゆっくりとこちらを見る。
その姿を前にして。
ヌーブは震えていた。
けれど、それは恐怖だけではなかった。
懐かしい。
怖い。
美しい。
そして――。
たまらなく愛おしい。
これこそが。
自分がずっと心の奥で求めていた存在。
優しい世界に閉じ込められた、弱々しいシクサーではない。
自分を追い詰め。
自分を傷つけ。
自分の世界を壊して。
それでもなお、圧倒的な存在感で立っていた――。
本物の怪物。
「……やっと会えた」
ヌーブは小さく笑った。
「僕の知ってるシクサーだ」
目の前にいるのは。
自分を簡単に壊せるほど強大なキラー。
そして自分は――。
何もできないサバイバー。
完全な立場の逆転。
けれど。
ヌーブにとって、それは絶望ではなかった。
むしろ――。
ずっと待ち望んでいた「帰還」だった。
「……おかえり、シクサー」
その声だけが、血と泥に染まったFORSAKENの領域に静かに響いた。