side 赤 .
診察が終わり、急いで中庭に戻る。あの二人は大人しく待っていてくれた。
宮「ふたりともっ、!」
岩「…あ、宮舘さん…」
二人とも表情がさっきより柔らかくなったような気がして、少し安心する。まだ強ばっていたらどうしよう、と内心不安だったのだ。
阿「…あの、プロデュース…の、話…」
宮「…うん、どうかな…、?」
岩「…宮舘さんさえ、良ければ…」
阿「俺達をプロデュース…してください、!」
2人は顔を見合わせ、少し微笑んでそう言った。嬉しかった、凄く嬉しかった。任されてる、頑張らないと、って。
宮「…任せてよ。」
「2人は、病院から出られないのかな…?」
阿「俺は出れるけど、症状が出たら助けて貰わなきゃだし、照は白血病だから外には出られないです…」
宮「わかった、じゃあ集合はこの中庭にしようか。」
岩「…すいません、」
不安そうな顔の2人の頭を撫で、安心させる。昔親にしてもらって凄く安心した気持ちになったことを。
宮「大丈夫だよ。」
「何も心配する事はない。」
阿「…..、」
岩「….. ( 背中擦 」
阿「っ、照ごめん、ありがと…」
岩「ん、いいよ…」
"いつも通り"。その言葉がぴったりな気がした。今の行動にどんな意味が含まれているか、そこまで俺には分からないけれど、いつも通りという言葉が合うような気がしたんだ。きっと、この2人のいつも通りなんだろう。
宮「…じゃあ、今歌える…?」
岩「はいっ、阿部は…」
阿「ん、歌える…」
2人を見ていて気付いたのは、2人はかなり負けず嫌いって言うことだと思う。いい相棒であり己を鼓舞してくれる良きライバルなのだろう。
岩「… ( 息吸 」
「「•*¨*•.¸¸♪.•*¨*•.¸¸♬」」
綺麗で繊細な歌声に心奪われる。力強く、だけど綺麗な歌声の岩本くんと、儚く、だけど声はしっかりとしている歌声の阿部くん。この2人が揃えばどんな歌もよりいい曲に聴こえる。言うならばアレンジ、といった方がいいのだろうか。元々の曲がより良く聴こえる。
岩「…こんな、感じっすかね…」
宮「…うん、ありがとうっ。」
阿「… ( 顔俯 」
宮「…すごく良かったよ。」
「2人の歌声、すっごく…」
岩「…ありがとうございます、!」
阿「… ( 頭下 」
宮「君達の歌声なら、」
「全世界の人に希望を届けられる…」
俺の夢が叶う、そんな気がした。全世界の人に希望を届ける、無茶な夢だけどこの2人なら、きっと叶えられる気がしたんだ。
宮「じゃあ、また明日…」
「ここで集合で、いいかな…?」
岩「…はい、!」
阿「…はい。」
宮「分かった、じゃあまた明日。」
岩「阿部、チーム名考えとかないとね。」
阿「それもそうだね?笑」
少し温かい会話が聞こえてくる。少し笑みを零しながら家路に着く。
宮「…早速、曲考えないとな。」
いつもの重い足取りが、今日は少しだけ軽くなった気がした。
宮「…ただいま。」
返事が帰って来ない生活にも、もう慣れた。冷蔵庫を開け水が入ったペットボトルを1本取る。
ちょうどお腹は空いていない。すぐに作業に取り掛れる。
宮「よし、やりますか…」
パソコンの前に座り、作業を始める。いつもは嫌いだこんな作業。どうせ売れないアーティストの歌を作って何が楽しいというのだ。どうせなら売れることを確信したアーティストの方が作るなら楽しいだろう。
けれど、まだそんな確信がないのに作りたくなったのは、2人の歌声が完璧だったから。俺の理想の歌声だったから。2人に合った曲は俺にしか作れない、と心の中で思っていたのかもしれない。
宮「…あれ、もう夜、?」
夢中になって作業をしていると時間を忘れる。今までの俺にはそんな事1回も無かったが、今日初めてなった。それほどまでに集中していたのだろう。2番の途中くらいまで出来てきた。
宮「…よし、あともう少し。」
また画面に向き直す。こんなに作曲が楽しいと思ったのは初めてだ。もっと、もっとこだわりたい。なんて思ったのも、初めてだ。
宮「…できた、」
結果、この曲が出来たのは深夜3時。それくらいこだわってしまった。あの2人の為ならまだ幾らでもこだわれるが、今日はとりあえずこれくらいにしておこう。2人に聴いてもらってからが本番だ。あの2人に作詞をしてもらおうと考えているから。
宮「…とりあえず、シャワー浴びてちょっと寝るか…」
こんなにワクワクしたのは初めてだ。足取りが軽い。シャワーを浴び、布団に入り、その日はすぐ眠りに着けた。いつもは寝るのに時間がかかるのに。よっぽど楽しみだったんだろう。
2人の喜ぶ顔が。
… 。
… 。
𝐍 𝐞 𝐱 𝐭 ▸ ▸ ▸ 980 .
コメント
5件
うわぁ...好きすぎる🥺
おー!すごい!!