今まで友達が少なかったとことを特別恥じたことはなかった。いや、「少ない」と言う言葉を使うのも、なんだか現実歪めている気がして気がひけるほど、私には親しい人間がいなかった。
別に寂しいと言う気持ちを抱いたこともなかった。ただ、今から振り返るとあの日々はとても真っ白で、華やかさに欠けて、、、。だからこそあの夏は一層、美しく映るのだろう。一夏の思い出にすらならない、くだらない記憶ただ積み上げてきたからこそ、私を彩ったあの夏は、私を満たして、溢れさせた。
高校2年に進級してから、あっという間に時間が過ぎた。クラスの人たちは、夏の計画を話しながら、楽しそうにおしゃべりをしていた。皆、夏が待ち遠しいらしい。私にとって春夏秋冬やることは一つ。勉強。だから、大して夏季の休みなど気にならない。ただ、、、。
何かが足りない。ずっと何かが足りない。そう思い続けて、何年が経つだろう。その「何か」が分からないまま、中学時代を過ごし、高校に入り、いまに至ってしまった。
高校の勉強の大半は簡単すぎてとても退屈で、答えなんて簡単に求められた。でも、この問いだけは、どれだけ考えても分からない。
「模試の成績も上々。将来が楽しみだねー。」担任の吉田はとても有頂天だった。自分のクラスに模試の成績が良い人がいるのがとても嬉しいらしい。
将来なんて私にはとても楽しみではなかった。自分の中の足りない「何か」が見つからないまま、このまま人生が進んでいくのは、死にたくなるとは言わないまでも、かなりつらい。
そんな不満が、私を私らしからぬ行為に導いたのだろう。夏休みに入って数日後、全ての夏の課題を終わらせた私は、自分の課題に真正面から取り組むことを決意した。
最寄りから二駅の、極端に利用者が少ない花嶋駅で降りたことは、特に理由なんてなかった。それがとても私を困らせることをこの時はまだ知らなかった。
「素敵な夕焼けね。」
白のワンピースと麦わら帽子を被ったその女の子は、突然私に話しかけた。いたことすら気づかなかった私は、突然の出来事に少し驚いた。
「そうですね。とても綺麗です。」
なんとか返事を返したものの、驚きの余韻がまだ心臓を鳴らしている。
「となり、良いかしら?」
「ええ、どうぞ、、、。」
「どうして、こんな駅に降りたの?」
座るなりしてきた質問に、特にこれと言った答えは持ち合わせてなかった。
「どうしてって、まあ、気まぐれかな。」
「そっか。つまり私たちがここであったことにも取り立ててて理由がないわけね。」
彼女は続けた。
「それはとても、素晴らしいことだと思わない?」
正直、意味がわからなかった。理解しかねてる私を察したのだろう、彼女はさらに続けた。
「特段意味も持たずにここにきたあなたと、特段意味もなくここにきた私が、偶然、同じ日の同じ時間に来たってこと。とても興味深くて素敵、、、。」
やっぱり意味がわからない。怪しい人なのだろうか?少し引いていた私を無視し、て彼女はついにあの台詞を言った。
「でも、理由が欲しい」
私は尋ねた。
「なんの理由かな?」
「私たちがまた会うための理由よ。私たちにはまだこれが必要なの。何故って?私たちはお互いをまだほとんど知らないから。理由もなく会えたらその時は、きっと、、、。」
「きっと何?」
「きっと、あなたは色々なことを知る。待ち合わせ相手が時間通りに来ない時の不安も、また明日って言って、別れる時の寂しさと幸せも。」
わからないことだらけだった。でも、そんなことはお構いなしのようだ。
「さあ、考えて。理由を。私たちが会う理由。」
「そもそも、私たちはまた会う必要があるのかな?」
少し冷たかったかもしれない。そう思ったのも束の間、
「あるわ。少なくともあなたにとってはとても必要。」
そう言って、彼女は微笑んだ。
「じゃあ、こうしましょう。私たちはまた明日この駅で、夕陽を見るの。それが私たちの合う理由。」
もう、辺りはすっかり暗くなっていた。
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お褒めの言葉ありがとうございます!よろしくお願いします!