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今日は杜若様から色々とお話がある日。
しっかり聞かないといけない。
今日も一日頑張ろうと、からりと戸を開ける。
そこに昨日と変わらぬ、華麗な隊服を着こなした杜若様が居た。
朝日よりも眩しい美貌にドギマギしながら、廊下に膝を着いて頭を下げてキッチリと挨拶をする。
「おはようございます。杜若様。杜若様や梅千夜さんのおかげで何も問題なく、今日を迎えることができました。立派な家、着物に朝ごはん、本当にありがとうございます」
「……見事だな」
なんのことだろうと思い、顔を上げれば杜若様が屈み、私の三つ編みに触れた。
紫紺の瞳が近くてびっくりする。杜若様の長い髪が、さらりと肩から流れ落ちて綺麗。
どこにも目線を定めることが出来ず、視線を右往左往させてしまう。
「な、なにが見事なのですか?」
「髪がまるで最高級の本金糸のようだ。桃色の着物と相まって春の花景色を思わせる」
にこりと微笑む杜若様の方が、満開の花のように華やかなのに。
あぁ。でもこの人は阿倍野晴命だと思うと視線がどうしても受け止めきれず、そっぽを向いてしまった。
「──昨日、口づけした仲なのにつれないな? それとも、もう一度しようか」
「!?」
その言葉にびっくりして、今度こそ杜若様を見る。
「やっと俺を見てくれたな。おはよう。環。問題なく過ごせたなら良かった。あと、挨拶はそのように膝をつかなくてもいい」
杜若様はそう言いながら、三つ編みから手を離し、私の手を掴んで自然と立ち上がらせた。
また目線が泳ぎそうになったけど、何を言われるかわからないと思い、杜若様のお顔を見続けた。
「っ、はい。以後気をつけます」
「さてと、これから詰所の会議室で俺の部下も交えて、話をしたいのだが良いだろうか」
「部下の方?」
「そうだ。正式な結婚式や披露宴はもう少し先になる。俺の両親も仕事で出張中。先に信頼出来る部下達に環を紹介しておきたい」
結婚式。披露宴。杜若様のご両親。
私はまだまだやることが多いのだと実感する。
「何も問題ありません。こちらこそよろしくお願いします。あの、でもご挨拶するならば、染め粉とかで髪を黒にした方が良かったですか?」
私の髪の色を杜若様や梅千夜さんは受け入れてくれたけど、他の方がそうだとは限らない。
すると杜若様は首を横に振った。
「環、つまらないことを言うな。俺が環の金色を気に入っている。他人に文句など言わせないし、誰の目も気にすることはない。杜若環として堂々としていたらいい」
スパッと言われて、目から鱗が落ちたような気分になった。
「杜若環……! そうですよね。私、もう雪華じゃない。杜若様と同じになったんですねっ」
ちょっと気恥ずかしさもあったけど、堂々していろと言う言葉が嬉しかった。
思わず微笑む。
「それでいい。じゃあ、行くか」
「はいっ!」
元気よく返事をして真新しい草履を履いて、杜若様の後をついて行くのだった。