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(口づけは、本当に好きな奴とするべきだ……)
もちろん、ファーストキスとか。そういう特別なもの以外も、だ。
でも、それよりも。亜玲に口づけられたことが、本当に嫌だった。
こんな最低で、悪魔みたいな奴に……。
「祈って、本当に純粋……ピュアって奴だね」
ニコニコと笑った亜玲が、そう言う。
……バカにしたような声音だった。その所為で、俺は起き上がろうとする。が、亜玲にあっさりと床に押さえつけられてしまった。
体格のいい亜玲に、俺は敵わなかった。
「まぁ、そういうところ、本当に可愛いよ」
亜玲のその言葉に、俺は目の奥を揺らしてしまう。
……可愛い? なにを言っているんだろうか、こいつは……。
けど、そう思えたのは本当に一瞬だった。亜玲の手が、俺の衣服にかけられたからだ。
(……なに、してるんだ)
動揺して、口から拒絶の言葉さえも出なかった。
それをどう受け取ったのか、亜玲は俺のシャツをまくり上げる。
胸元まで露わになった俺の身体を、亜玲が見下ろす。それは欲を含んだもののようであり、俺の身体がゾクゾクとする。
(にげ、なくちゃ……)
頭がそれしか考えられなくなる。
なのに、俺の上に跨る亜玲を押しのけることさえ、出来ない。
「きれいだよねぇ、祈って。……なんだか、女の子みたい」
「……は?」
確かに俺はオメガだから、普通の男よりは可愛らしいかもしれない。
でも、さすがに女の子みたいなわけがないだろ……!
そう思う俺を無視して、亜玲の手が俺の脇腹を撫でる。瞬間、俺は無意識のうちに身体をびくんと跳ねさせてしまった。
「敏感だね。……こういうこと、されたことないの?」
亜玲がさも当然のようにそう問いかけてくる。……あるわけ、ない。
「あるわけ、ないだろ……!」
だって、そこまで信頼関係を築くよりも前に、俺はフラれてきたのだから。
ほかでもない、亜玲が原因で。
「お前の、所為で……!」
必死に亜玲を睨みつける。だが、こいつは笑うだけだった。楽しそうに、嬉しそうに、愉快だとばかりに。
欲を孕んだ目で俺を見下ろして、亜玲が笑う。……身体が、きゅんと反応してしまう。
(違う、こんなの、俺の気持ちじゃない……!)
そう思うのに、亜玲に身体を撫でられていると、経験したことのない疼きが身体を襲った。
自然と喉が鳴って、油断したら声が漏れてしまいそうだ。
「ぁっ」
「いいよ、声、上げて。ここ、防音だから」
にっこりと笑った亜玲が、俺を見下ろして身体を撫でる。……防音、なんだ。
「ぁ、あっ、っ」
際どいところにも触れられて、小さなうめき声が漏れる。
……ダメだ、これ以上は本当にダメだ……!
「や、めっ」
亜玲の手に自身の手を重ねて、必死に奴を制止させようとする。しかし、手に力が入らない。
「やめてほしいの?」
俺の言葉を聞いて、亜玲がそう尋ねてくる。俺はこくこくと首を縦に振ることしか出来ない。
そんな俺を見て、亜玲が俺の耳元に唇を近づけた。そのまま、耳朶を軽く噛まれて目を見開く。
「やーだ。……こんなところで、やめられるわけがないんだから」
耳元で、艶めかしい声でそう囁かれる。
それだけで、身体の芯がじぃんと熱くなった。……ダメだ、ダメだ。
このままだと、俺は亜玲に――。
そう思うのに、耳の孔に舌を差し込まれて、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐められると、身体が反応してしまう。
亜玲の手は俺の腹から胸に移動していく。薄い胸をなぞって、硬くとがった先端に触れる。
「んっ!」
ぴりりとした快感が身体中を駆け抜けて、自然と喉が反る。
「感じちゃうんだ。……可愛いね」
耳元で亜玲がそう囁いた。かと思えば、亜玲の指が俺の乳首をぎゅっとつまみ上げた。先ほどよりも、ずっと強い力で。
「ぁっ」
先ほどよりも、声が漏れた。
気持ちいい。頭がそれだけに支配されて、もっとしてほしいという欲求が生まれる。