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屋上に吹き込む風が、二人の間をすり抜けていった。
柚希は視線を落とし、言葉を選ぶように口を開く。
「……友達、いないから」
自分でも驚くほど、あっさりと本音が漏れてしまった。
誰にも打ち明けたことのない弱さを、なぜかこの人の前では隠せなかった。
一瞬の沈黙のあと、海がぱっと笑顔を見せる。
「じゃあ――俺が友達第1号だな」
「……え?」
柚希は思わず顔を上げる。
冗談めかしているようでいて、彼の目はまっすぐだった。
「これからは屋上、二人の場所にしようぜ」
軽やかな言葉に、胸の奥がじんわり熱くなる。
冷たく閉ざしていたはずの心が、少しだけほぐれていくのを感じた。