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「……勝手に決めないで」
口ではそう返したが、声に力はなかった。
むしろ胸の奥では、不思議な温かさが広がっている。
海は気にも留めず、金網越しに空を仰いだ。
西の空に広がる夕焼けが、彼の横顔を赤く染めている。
「……やっぱり、ここいいな。風も気持ちいいし」
何気ない言葉なのに、隣に彼がいるだけで景色が少し違って見えた。
柚希は無意識に、その横顔をじっと見つめてしまう。
「なに?」
「……別に」
慌てて視線をそらす。
けれど頬がほんのり熱くなっていることに、自分でも気づいていた。