もう、終わったんだって思っていた。どんなに愛しいと思ったって、思い出すたびに切なくて泣きたくなったって、今更遅いんだって。
照が俺を好きじゃなくなった。だから俺たちは別れることにした。
恋愛における、至ってシンプルな理屈で、たどり着く結末なんて誰だって安易に想像できる。
外の空気や音や色、その全てが突然ひんやりとして俺に突き刺さってきた。俺はとても寒かった。
照はヒドイ。だって、俺をこんなにだめな人間にしてしまった。俺はもう、照がいなきゃ本当に、全くだめなのに。
照はヒドイ。こんなに好きにさせたくせに、こんなに、照のことしか考えられなくさせたくせに、もう飽きただなんて、ひどすぎる。あんまりだ。人でなし。
照なんて、照なんて…
心の中で思いつく限りの悪口を言って、憎いところだって挙げたらキリがないのに、俺はまだ照のことが好きで好きでしょうがない。どうしようもない俺。勉強だって、やりたくてもとても手につかない。
でも、こんなに俺をどうしようもなくさせたのは照なんだ。照のせいだ。全部照が悪いんだ。隣りにいて欲しいのに。俺はこんなに寒いのに。
本当に、凍えてしまうくらい寒くて、思わず自分を抱きしめたその時、不意にインターホンが鳴った。しんとした静寂を貫くような神聖な響きで。
俺は弾かれるように顔を上げて、来客も確かめずにドアを開けた。
「…どうしたの?」
疑問がこぼれ落ちるみたいに、俺の口をついて出た。目の前には、照が立っていた。
照は何も言わなかった。下を向いて、はあはあ言いながら肩を上下に揺らしていた。すごい勢いで走ってきたみたいだった。
俺はどうしていいかわからずに、じっと照の濡れそぼったつむじを見つめた。 あまりに驚いたせいで、何を言ったら良いかわからなかった。
「ごめん、言い過ぎた」
顔を上げた照が言った。たった一言、小さな声で。
「…照、びしょ濡れだよ」
傘もささずに、どうしようもない。
照に抱き寄せられて、腕の中で一緒にびしょ濡れになったけれど、身体は熱くて、まるで燃えるみたいだった。
耳元に、柔らかい唇の感触と、照の吐息。
「ほんとに、どうしようもねーな」
うん、俺も今、そう思っているところ。
コメント
6件
え待って好きぃ!!!!💛💚
あら、なんか勘違いしちゃったのかな?🤭阿部ちゃんこういうの1人で考え込みすぎそうですよね。笑
痴話喧嘩かぁいっ!!!www