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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第60話 澪視点〚 守られ続けることを選ぶか迷うか〛
集合場所に着いて、
班ごとに固まる。
私は、
気づいたら海翔の近くに立っていた。
——無意識だった。
(……また)
そう思って、
少しだけ足をずらす。
でも、
海翔は何も言わない。
追いかけてくるわけでも、
離れるわけでもなく、
ただ同じ距離を保つ。
(ずるいな……)
心の中で、
そう呟いた。
守られているのに、
縛られていない。
自由なのに、
一人じゃない。
(こんなの……
安心しちゃうに決まってる)
先生の説明が始まる。
私は、
内容を聞きながら、
別のことを考えていた。
(このままで、
いいのかな)
修学旅行が終わったら、
また日常に戻る。
その時も、
私はこの空気の中にいていいの?
(海翔がいない場所では、
私はどうなるんだろう)
考えただけで、
胸の奥が
ひやっとした。
(……依存、
してるのかな)
そんな言葉が浮かんで、
すぐに否定する。
違う。
海翔は、
私を支配してない。
私も、
彼に決められていない。
でも。
“頼ってしまう”。
それは、
否定できなかった。
ふと、
海翔の横顔を見る。
真剣で、
でも穏やかで。
(この人は、
私が離れたいって言ったら、
ちゃんと離れる)
なぜか、
それだけは
確信できた。
だからこそ、
余計に迷う。
(自分で立たなきゃ、
いけないのに)
(でも、
今は……)
バスの中で、
隣に座ることになった。
偶然か、
配慮か、
分からない。
座席に腰を下ろした瞬間、
体の力が抜けた。
(……はあ)
安心してしまった自分に、
少しだけ
苦笑する。
(私は、
弱くなったんじゃない)
(“守られること”を、
知ってしまっただけ)
それは、
戻れない変化だ。
海翔が、
小さな声で言う。
「……大丈夫?」
私は、
少し考えてから、
頷いた。
「うん。
でも……考え中」
「そっか」
それ以上、
聞かれなかった。
その距離感が、
ありがたくて、
また迷う。
(選ぶのは、
私なんだ)
守られ続けるか。
一人で立つか。
——たぶん、
答えは
まだ先。
私は、
窓の外を見ながら、
心臓の静けさに
耳を澄ませた。
何も見せない今だからこそ、
自分で選ばなきゃいけない。
そのことだけが、
はっきりしていた。