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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第61話 海翔視点〚離れる覚悟も、隣にいる覚悟もある。〛
バスが走り出してから、
澪はずっと窓の外を見ていた。
話しかけようと思えば、
できた。
でも、
しなかった。
(……今は、
そっとしておく時間だ)
それが、
直感的に分かった。
守るって、
前に立つことだと思ってた。
危ないものから遠ざけて、
近づけさせなくて、
全部自分が引き受けること。
——でも。
最近、
違う考えが
頭を離れない。
(澪は、
“守られている”ことを
ちゃんと感じてる)
それは、
嬉しい反面、
少しだけ怖い。
もし。
この距離が、
澪の自由を
奪っているなら。
もし。
俺が作ってる“安全”が、
澪にとって
息苦しい檻になっているなら。
(……その時は)
胸の奥が、
ぎゅっとした。
俺は、
隣にいる覚悟だけじゃなくて、
離れる覚悟も
持たなきゃいけない。
澪が、
自分で選ぶために。
——それが、
本当の「守る」だ。
バスが、
信号で止まる。
その拍子に、
澪が少しだけ
こちらを見る。
目が合った。
一瞬だけ。
言葉はない。
でも、
その視線に
全部詰まっていた。
(迷ってる)
それも、
分かった。
だから、
俺は何も言わない。
手を引かない。
指示もしない。
ただ、
隣にいる。
(……選ぶのは、
澪だ)
俺は、
その選択を
受け止める側だ。
たとえ。
「少し離れたい」
そう言われたとしても。
その時は、
ちゃんと一歩下がる。
逃げない。
拗ねない。
傷つけない。
(それが、
俺の覚悟)
バスが、
目的地に近づいていく。
クラスの声が、
少しずつ
大きくなる。
その中で、
澪の存在だけが
はっきりしていた。
隣にいる覚悟。
離れる覚悟。
——両方を持って、
俺はここにいる。
それでいい。
それが、
今の俺にできる
一番の「守り方」だ。