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夏の熱帯夜、木の軋んだ古屋に…シトシトと小粒の雨が降り始める。 私は縁側に一人、寝転び。 夏を感じている。
庭先の夏の虫が奏でる鳴き声。 嫌な湿気を孕んだ温風。 この居心地の悪い暑さの中でも、涼やかに澄ました朧月。
その全ての要素が調和し、 静かで…美しい…夏の夜の情緒を醸し出していた…。
やがて夏の夜の雨は…ざあざあ と激しさを増してゆき…。 何処から迷い込んだか、カエルの鳴き声が聴こえてきた。 私の心は…その雨の激しさに共鳴するように…
高鳴り。
静まり。
曇り。
また、高鳴ってゆく。
眠れない真夜中。 私と雨だけが、この空間に存在している。
私は頭を掻き毟り、月を眺めるが、 月は雲に隠れて見えなかった。
夏の雨は変わりやすい。 いきなり勢いよく降り注いだと思えば、 尻すぼみに、勢いを失ってしまう事もある。
あれ程、ざあざあと降り注いでいた雨も、やがては静まる…。
私は縁側の戸を閉め、もう一度布団に入ってみる。
熱帯夜の雨のお陰か、その夜はよく眠れた。