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第2話.買い出しの帰り道
スーパーで部活用の飲料やテーピングを買い終えた三人。荷物を分け合いながら、夕暮れの商店街を歩いていた。
「ねぇねぇ、春竜ちゃん。次の試合、応援席からでも俺に一番大きな声援送ってね?」
及川が冗談めかして振り返る。
「べ、別に……選手全員を応援するから、及川先輩」
春竜がそう答えると、横で国見が低い声でつぶやいた。
「……及川さん、そういうの、困らせてるだけ」
「えー? 俺はただ元気づけたいだけなのに~。ね、国見ちゃんもそう思わない?」
「思わない」
国見の即答に、春竜は思わず笑いそうになる。
その時、不意に春竜の手から袋が滑り落ち、ペットボトルが転がった。
「わっ……!」
慌てて拾おうとすると、同時に国見の手が伸びて、指先が触れる。
一瞬、視線がぶつかり、春竜の心臓が跳ねた。
国見は小さく息をのんだように見えたが、すぐに目を逸らし、袋を持ち直して立ち上がる。
「……俺が持つ」
「ありがと、国見ちゃん」
照れくさく礼を言う春竜。
その様子を横目で見ていた及川は、にやりと笑った。
「ふーん、なるほどねぇ。春竜ちゃん、やっぱり“国見ちゃん”のほうがいいってわけ?」
「ち、違っ……! そ、そんなこと言ってません、及川先輩!」
春竜は慌てて首を振るが、顔の熱さをごまかすことはできなかった。