この作品はいかがでしたか?
83
この作品はいかがでしたか?
83
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
――くいっ
「ん?」
キッドのマニキュアが少し剥げてきたのを指摘したら「塗れ」と言われたので、大人しくマニキュアを塗っていたのだが、唐突にキッドが俺の右腕につけているブレスレットを指で引っ張った。
「……これ、貰い物か?」
「え、うん。プレゼント」
「…………」
キッドが引っ張る力を少しだけ強くする。なんだ? そんなに引っ張られると壊れ……あっ。
「ブレスレット壊したらキッドのこと嫌いになるからな」
俺が少々早口でそう言うと、キッドはパッと手を離した。……ふう。油断も隙もあったもんじゃない。これはローから貰った大事なものなんだ。いくらキッドが俺を好いていようがお前がこれを壊す権利はないんだぞ。全く。
ちら、とキッドの方を見ると、少しだけバツの悪そうな顔をしていた。よし、もうしないだろう。
「ほら、次右手」
俺は左手の爪を全て塗り終わると今度は右の手を取り同じように丁寧に塗っていく。
「……なァ」
「んー?」
「俺がテメェに物をあげたらどうする?」
「それくらいなら普通に嬉しいけど。キッドセンスはいいしな」
素直にそう褒めるとキッドは満足げに笑った。わかりやすすぎる。お前は尻尾振る犬かなんかか??
にしてもこう聞いてくるってことは近いうちに何か贈ってくるってことでいいんだろうか……。
そんなやり取りをしたのが数日前。
俺はキッドの部屋で本を読んでいた。キッドの手の中には高そうな箱が2つ。量より質で来たか……。クソ高そう。
かぱ、とキッドが箱を開ける。1つは指輪、1つはチョーカーだった。お、重~~~~~!!!?
「左手出せ」
「……………薬指につけるとか言い出さないよな?」
「他にどこがあるんだよ」
知ってた~~……。でも駄目だろう左手の薬指は……。
「人差し指じゃ駄目か?」
「ア?」
「凄むなよ~……人差し指には縁結びの効果があるんだぞ。こっちでもいいだろ…?」
「………………」
うわぁ無言怖い……。なんておもむていると、キッドが箱の中から指輪を取り出して俺の左手の人差し指にはめる。
「…シンプルでカッコイイな」
「後ろ向け」
「あ、そっか、もう1個あんだもんな」
ここで断る理由ももはやないので、俺はくるりとキッドに背を向ける。するとすぐに首にチョーカーがかけられた。キッドの方へ振り返り、チョーカーを撫でながら礼を言う。
「ありがとうキッド。やっぱお前センスいいな。貰ったからには大切にするよ」
にっこりと笑ってみせると、キッドは少し照れたように視線を逸らす。ッカァ~~~、たまにそうやってピュアな反応せんでもらえますかね。色々と俺の中の何かが揺らぐんで。
「にしてもなんでチョーカー?指輪はまあ……わからんでもないけどさ」
「ん? あぁ、首輪があったらすぐお前を呼べるだろ?」
「それはどういう――」
こと? ――と聞こうとした瞬間に、俺の体がくんっとキッドの方に引き寄せられる。
「……今の、能力か?」
「そうだ」
「普通に呼んでくれよ……。キッドの匙加減で苦しくなかったけどよ……」
呆れ気味に言うとキッドはニヤリと笑った。
「愛してる」
これで何度目かの愛の言葉。