テラーノベル
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ある朝、乾いた目を擦って朝焼けを見た。
カーテンの隙間から見える鮮やかなオレンジ色が、眩しく部屋を照らす。
ベッドから起き上がってカーテンを開けると、雪はまだ積もっていなかった。
こんな寒い朝でもまだ降らない雪が焦らす。
『ん…おはよ…。』
(あっやべ…起こしちゃった…。)
「おはよ。仁人。」
勇斗がふっと振り向くと、ベッドの上で少しだけ目を開けた仁人が居た。
その一瞬、子猫か天使かと思った。
(可愛いな…ちょっと意地悪しちゃお(笑)。)
「仁人珍しく寝癖付いてんじゃん。」
『え…嘘…どこ…?』
「無いよ(笑)そんなぺたぺた頭触ったら酷くなるよ。」
そう注意すると布団に手をパタッと置いてこちらを睨んだ。
流石に愛おしく思って仁人の近くに行くと、仁人はマスクを外してベッドの傍にあった水を飲んだ。
『…ん。』
それだけ言って目の前で無防備に手を広げる。
首がだるいのか少し首が傾く。
「はいはい。」
ちゅっ。
仁人の期待に外れて耳にキスをした。
そうした途端に仁人の顔が赤くなる。
『何なん…違うし。』
「じゃあ普通に言ったら良いのに。」
(ちょっとテンション下げちゃった…?)
『……して。』
顔を隠して何かを言う。
正直、何をして欲しいかなんて分かってはいるが、心の中の意地悪な性格が「まだするな」と言っているのだ。
だって、昨日の夜なんてどれだけ勇斗が仁人のわがままに応えたか数え切れない程だったから。
ー昨晩ー
ヴーッ、ヴーッ…
「…はい、もしもし?」
〈勇斗…あの…。〉
どこか申し訳なさそうに仁人が電話をかけてきた。
何を言葉に詰まっているのかと思えば、こんな事だ。
〈…会いたい。〉
「え?それだけ?こっち来る?」
〈あ…うん。今からそっち行く。〉
この電話をしてからすぐに家に来たし、ご飯も作ってあげたし、髪の毛も乾かしてあげた。
今日くらいはその倍返しで仁人を可愛がりたい。
「ごめん…なんて?」
『…ぎゅうして。』
寝起きの少しだけ掠れた声でそう訴える。
これは確信犯だと勇斗は思った。
これから可愛がられる為に可愛子ぶってるのかとも考えられる。
そんな邪な考えを吹っ飛ばすように仁人は勝手に膝の上で丸まる。
まだ眠たそうな目がこっちを見てぱちくり。
「仁人さ、正直自分の事まだ可愛いって分かってるでしょ。」
『んー…ごめんやけど俺もう可愛いは卒業してるから…リーダーだし…。』
「へー…そっか。」
(卒業できてねーよ。クソ可愛いじゃん。)
本音は出さずに仁人に意地悪な事を聞く。
自分の事を分かってる雰囲気出してるクセして全く真逆な仁人が可愛い。
『勇斗きょっ…やべで。』
「ふふっ(笑)ぶーぶーじんちゃーん。」
『…やべで。』
両方のほっぺをむぎゅっと掴むとダルそうに手首を掴まれた。
大優勝に可愛い反応に勇斗の心は釘付け。
これ以上意地悪すると自分自身が持つか分からないくらいだ。
「ごめんごめん(笑)…ねーそろそろどいて。」
『あっ…ごめん。』
「ほんと、仁人可愛い。」
『…は?もうそんな事言われる年齢じゃねぇし。』
「へぇ、そうなの?(笑)」
そっぽ向いて拗ねたようにまた布団に潜った。
「もう意地悪するな」を言いたいのだろうが、数秒で出てきた。
勇斗が何もしないから構われないと思ったのだろう。
『ねえ、』
「ん?また何かあんの?」
『…ほんとに膝空いてないん?』
「ごめんやっぱ空いてる。来い。」
ぽふっと膝にダイブ。
そんなに甘えたかったのかスリスリ匂いを擦り付けてナワバリを作っている。
直毛の綺麗な髪の毛が乱れていくのを見守って仁人の頭を撫でた。
『…やめて。』
「…。」
なでなでなでなでなで…。
『ねえやめて。』
なでなでなでなでなで…。
ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ…。
『…。』
完全に諦めモードで撫でられている。
「…ちょっとさぁ、我慢出来ないよね。」
『どういう事?』
「これはぎゅうするしかにゃいよね。」
『…喋り方何?』
「じんちゃんぎゅぅぅぅぅっ!!!」
『うわぁぁっ!』
仁人を優しく、強く抱いて…いや、ぎゅうっとして離さない。
ぎゅうと同時に最近出来ていなかった”仁吸い”をする。
スゥーッと鼻から仁人の香りを吸い込み、そしてぎゅうして頭をスリスリ…。
『んぶっ…はやとっ…。』
「じんちゃんかわいいね〜。俺の事だいちゅきでちゅね〜。」
『はっ、はぁ?なっ…。』
勇斗は心が落ち着いた所で力を抜いた。
今ドキドキした勇斗の鼓動は仁人に届いているのだろうか。
そう考える。
「横になって良いよ。」
『あぁ…うん…。』
抱き合ったまま布団を被って見つめ合う。
その数分で仁人の寝息はすーすーと聴こえてきた。
寝顔も笑顔も何もかもが愛おしく感じてしまい、胸の奥がギュッと締め付けられる。
「このまま時が止まったら良いのにね…仁人。」
一人で静かに仁人を起こさないように言うと、仁人は眉を寄せた。
朝焼けだった空は青く澄んでいて、そこから一時間近くは仁人を見つめていた。
時の流れなんて関係ない。
ただ、仁人が愛おしく思える時間があれば良い。
仁人が起きたら、ご飯食べようね。
仁人の寝顔、可愛いよ。
仁人は今、夢見てるの?
心の中で仁人にテレパシーを送っているつもりだ。
届いて仁人が受け止めていたら良いのにと思う。
仁人、愛してる。
それを最後に、勇斗も目を瞑った。
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