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「お前の奥さんマジで天使すぎる」
自宅で友人とその友人の奥さんと酒を飲んでいた時のことだ。急に友人からそう言われた。まあ当然友人の奥さんは嫉妬して頬を膨らませていた。
「だろ!俺の自慢の奥さんだ」
「羨ましすぎるー!俺も夏帆ちゃんみたいなデレデレ奥さん欲しいなあ」
夏帆とは俺の奥さんだ。
甘えん坊でほわほわしてて、とにかく可愛い。
「でもな、ここだけの話、振り向かせるの中々大変だったんだぞー?笑」
高校、
夏帆と俺の出会いは高校だった。
文化祭で夏帆はバンドをしたがそれにすっかりハマってしまい恋愛などする気にならない。全然こっちを見てくれなかった。
「あのっ!」
「なに、暇じゃないんだけど」
「バンド凄く良かったです!」
「それだけ?」
文化祭の後勇気を振り絞って話しかけたが彼女は冷たく返事をし去っていった。
でも、本当は嬉しかったんだよな。バンド褒められたの。彼女が去っていった後、追いかけていくと彼女は空き教室で嬉しそうに飛び跳ねていたのを覚えてる。
(全く、ツンデレなんだから)
次の日
その日は今日みたいな綺麗に晴れた青空の日。
何となく授業をサボりたい気分だった。
授業から抜け出し屋上へゆっくりと歩いて行く。すると屋上に近づくに連れ、優しく暖かい歌声が聞こえた。
(きっとあの子だ)
でも彼女の声は震えていて今にも泣き出しそうな悲しい声。
俺はそんな歌声を聞いて、走った。
だって彼女のこんな声聞いたことないんだもの。だって、だって、彼女は自分勝手で冷たくて人に真剣に向き合おうとしない。音楽がとにかく大好きな女の子。でも本当は友達が欲しい。人が好き。人と音楽を楽しみたい。そう思ってる女の子。
素直じゃない普通の女の子。
勢いよく屋上のドアを開けるとそこに居たのは涙を流しながらこちらを見ている彼女。
夏帆がいた。
「なんで、ここに、?」
そう言った後彼女は急いで涙を拭き取って屋上から出ていこうとした。
「ちょっと、!」
俺はとっさに彼女の手をグッと掴んだ。
「なに?!」
振り返った彼女はまだ涙目だった。
「泣いてんじゃん」
「悪い?私だって人間なんだから。心がないなんて、」
「誰にそんなこと言われた」
「…」
「言いたくないなら無理しなくてもいいよ」
しばらく俺と夏帆は屋上で空を見ていた。
「私、音楽が好き」
突然言われた一言だった。
「知ってるよ」
「え? 」
「俺この前の文化祭で夏帆のバンド褒めたじゃん」
「うん、」
「あの時夏帆すっごい喜んでただろ」
「は?!な訳ないじゃん、」
「ふーん笑」
夏帆が顔を赤らめる。赤くなった彼女も可愛いなあ。
「素直になる事も大事だぞ」
「素直に、?」
「夏帆さ、いじめられてるだろ」
「別に、」
「いじめられても強がってさ」
「…」
「本当すげえよ」
しばらく黙り込むと夏帆はまた涙目になって話し始めた。
「うち親いなくてさ、」
「…」
「今は妹と2人で住んでるんだ。」
涙を拭き取る
「妹の前で弱音吐く訳にはいかないのっ!」
その時夏帆の見せた顔は辛そうだった。
辛そうな笑顔。
「なあ、」
「なに?」
「俺、夏帆が好き。」
「え、?!?!」
「素直になれない所も」
「ちょ、急になに、///」
「いじめられても妹の前では頼れるお姉ちゃんで居てさ、弱音1つも吐いたことねえだろ」
「…うん」
「俺、お前の妹と塾同じ」
「そうなの?!」
「おう、お前の妹からいっつも夏帆の話聞かせてもらってるよ」
「なにそれ、笑」
「もう1回言うけど、俺は夏帆が好き」
「…私自己中だよ?」
「知ってる」
「素直に気持ち伝えれないかもしれない、」
「それでもいい」
「弱音吐いちゃうかもだよ、?」
「もう弱音吐かれたよ!笑」
「…」
「私も、君が好きっ!」
その日見た彼女の顔は明るくて可愛くて、雨上がりの虹のような笑顔だった。