テラーノベル
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試験会場前に到着した転孤は静かに深呼吸をして試験に備えていた。小さく後ろから会話が聞こえる。
「彼は今、試験に備えて精神統一を図っているんだろう。迷惑だからやめておくんだ。」
「迷惑なんかじゃありません!私は彼に言わなきゃならないことがあるのです!!」
それは昇降口で出会った少女と説明中に質問をした優等生らしきメガネの男子だった。
なんだアイツら。
転孤に会話は丸聞こえだった。そしてなるべく関わらないようにしようと思った。
「実践に合図なんてねぇんだよ!試験はもう始まってんぞ!!」
試験会場の上の方からプレゼントマイクの声がした。その言葉に転孤はすぐ反応し走り出した。周りも一斉に走り出し慌ただしく試験が始まった。
出遅れた先ほどの少女も慌てて後を走り出すのが見える。その姿もお構いなしに転孤は試験会場に溶け込んでいった。
仮想敵〈ヴィラン〉は戦車程度の大きさ、弱い個性の転孤には敵わない物だった。周りの受験者によって〈ヴィラン〉はどんどん数を減らしていった。出遅れていたはずの女子も、メガネの男子もいつのまにか20ポイント、50ポイントと集め出している。焦りが増して行くのが自身でも分かった。このままでは0ポイントで終わってしまう、オールマイトから受け継いだ力が無駄になってしまう…。
轟音が会場に響き渡った。
音のする方を振り向けばそれは0ポイント敵〈ヴィラン〉だった。それは想像以上の大きさをしていた。周りの受験者が急いで敵〈ヴィラン〉から逃げていく。転孤もすぐさま人の流れに乗り逃げ出した。しかし後ろから一つの悲鳴が聞こえた。
「いった…!」
振り向くと昇降口での女子が瓦礫に挟まれ動きを取れなくなっていたのだ。転孤は足を止めた。頭の中では分かっていた、このままでは確実に試験に落ちてしまう、他人に構っていられるほど自分は今、優位な立場ではない。それでも気がつけば、体が勝手に動いていた。
足に思いっきり力を込めて跳ね上がった。今までいたコンクリートの地面が抉れ、
風のような勢いでロボットの高さまで飛び上がり、ロボットに向かって拳を振り上げる。
オールマイトから教わった力の出し方を思い出す。
「けつの穴グッと引き締めて、心の中でこう叫べ――」
「スマァァァァァァッシュ!!!」
拳をロボットに振り落とした。その途端にロボットは後方に勢いよく倒れていった。
前とは、あのヘドロ敵〈ヴィラン〉の時とは同じような場面、でも違う。今度は自分の力で守れたのだ。
拳を握りしめる。と同時に転孤は今の状況を読み取り絶望した。まだ0ポイント。
自身の個性で地面までゆっくり降下する。女子を挟んでいた瓦礫は自分がロボットをぶっ飛ばした勢いで飛んだらしく、その女子は無事そうだった。
今の力で片腕両足を壊してしまい、残るは左腕のみとなってしまったのだ。残り時間が少ない、早く敵〈ヴィラン〉を倒さなくては、1ポイントでも取らなければ…。
低く浮遊し移動する。しかし試験も終盤、敵〈ヴィラン〉はもうほぼ残っておらず、探しているうちに終了の声が響いた。
「しゅーーりょーーー!!!」
転孤はその言葉に力が抜けてしまい、その場に倒れ込んだ。
その後、転孤は雄英の養護教員リカバリーガールに治癒され雄英を後にした。実践試験に手応えは全くなく、転孤は重い足取りで家に帰って行った。
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コメント
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今回も面白かったです! いつも、絵と小説の二重進行お疲れ様です! 相変わらず絵が上手いこと…✨ 続きも気長に待ってます!