テラーノベル
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ヒートから開けて数日後。
調子を取り戻した仁 人は、週末午後に入っているキッズのグループレッスンを担当していた。
「ダウン、しっかり腰を落として。次、アップ、胸意識して。はい、またダウン、アップ。じゃあ今から音とるよ、ワン、ツー……」
ブラウンに黒のサイドラインが入ったスウェット素材のセットアップを着て子どもたちの前に立ち、一緒に上下の動きを確認しながらカウントを取る。手拍子で音を取り今回の振り付けを終えると、今度は曲を流して子どもたちに背を向け先頭に立った。
小学校低学年クラスの子どもたちは真剣な表情をして、仁 人の動きを追っている。
太 智と舜 太は柔 太朗から連絡をもらい、スタジオを訪れていた。
キッズクラスのスタジオはガラス張りになっているので、外で保護者も見守れるようになっている。数人の保護者が固まり集まっていたが、何故かみんなチラチラとスタジオの外を見ていた。
「おったわ」
太 智が目線で合図する。
その目線の先にはベンチに座り、じっとレッスンの様子を見つめている男がいた。
全身黒ずくめで黒いキャップを被り首元には金のネックレス、黒縁メガネにグレーのマスク姿という、いかにも怪しげな風貌なのに、何故か華があり目が離せない。
通報レベルの出立ちでも、今日は黒がコンセプトなんですね。素敵ですね。で押し通せそうなほど着こなしていてサマになっていた。
「わ、ホンマや。顔ちっさ」
舜 太が太 智の隣で思わず呟く。
足なが〜、スタイル良すぎ。ほぼ顔見えてへんのに、格好良いなあ。なんて、ほわほわ浮き足だった感想を並べ立てるので、太 智は舜 太の背中を叩いた。
「いたっ」
「顔ちっさくて足長いんはお前も一緒や。自信持て。フワフワすんな」
「うん、ありがと! 今日は仁ちゃん守りに来たんやもんね」
舜 太は顔を引き締めた。
他の保護者たちも同じような気持ちでいるのだろう。我が子を見つつも、ついつい視線が男に向けられている。
スマホに送られてきた、柔 太朗からの短いメッセージ。
『緊急招集。佐野 勇 斗が来てる』という呼び出しに肩ぶん回しで馳せ参じた二人は、勇 斗と適度に距離を取れる位置に立ち動向を探る。もし、また仁 人に急接近するようなら、すぐに阻止するためだった。
呼び出し主である柔 太朗の姿を探すと、白のTシャツにデニム姿の柔 太朗がスタジオ内の隅っこでパイプ椅子に座っているのが見える。
一見、ダンスのプロみたいな表情で真剣にレッスンを見ているが、柔 太朗にダンス経験は全くない。
「まだレッスン中やから、動くとしたらその後やろうな」
「そうやね。しばらく様子見かな」
二人でアイコンタクトを取りながら、勇 斗を視界に入れる。
勇 斗は足を組み、膝に肘をついて真っ直ぐにスタジオでレッスンの指導をしている仁 人を見つめていた。
時折、眼鏡越しに目を細めて微笑んでいる様子が分かる。その顔は本当に嬉しそうで、太 智と舜 太はまた目を合わせた。
勇 斗が体勢を変えるたびに、勇 斗の周囲が静かに動揺しているのが端から見ていて面白い。二人もまたその集団の一人であった。
これだけ周りの視線を浴びていても、勇 斗は動じることがない。視線は全くぶれず、仁 人の姿を追っている。
「さすが芸能人やな。見られ慣れてるのか、強心臓や。俺ならソワソワしてまうわ」
「ほんと、つい見ちゃうんよ。あ、いま帽子被り直した。あんな仕草でも格好良いのズルイ」
太 智は舜 太をじとりと横目で見やった。
「舜 太、お前ちょっとファンになってきてないか。あいつは要注意人物やぞ。見てみろ、あんな黒ずくめの格好で金のネックレスしてチャラチャラして、いかにもチャラ男の怪しい奴やんか」
「それ言うなら大ちゃんも全身真っ黒やん」
「俺は半袖半パンのヘルシー肌見せコーデやろ! いかついチャラ男と一緒にすんな」
「同じ真っ黒なのに対極にいるよね」
「大体お前の赤のTシャツ&犬のベロ出しプリントもどうなん? 目立つし緊張感ないわ〜」
「やって、他の洗濯中で、今これしか無かってんもん。急いで来たんやから許してよ。あ、大ちゃん、そろそろ終わりそうやで」
しばらくしてレッスン終了の時間となり、子どもたちが元気いっぱいにスタジオから飛び出してくる。
「せんせー、さよならー!」
「はい、気をつけてね。また来週」
スタジオの奥から仁 人の声がした。
子どもたちは各々保護者の元へ駆け寄る者もいれば、友達同士テンション高くはしゃぎながら帰っていく者もいる。その中の一人が、友達との話に夢中になっていて、座っていた勇 斗に勢い良くぶつかった。小さな身体が反動でよろめいたが、咄嗟に勇 斗が腕を伸ばして優しく引き戻してやる。
「あっ」
「大丈夫?」
「ごめんなさいっっ!」
子どもがぶつかった事を謝ると、気をつけてね。と目で笑いかけ応えている姿を見て、舜 太は思わず両手で口元を覆った。
「わぁ、良い人そうじゃない?」
「アホ! 舜 太。あんなん普通やろ。しっかりせぇよ」
「はっ、またちょっとキュンしてしまってた。アカンアカン。太ちゃんありがとな」
舜 太はそのまま頬をパンと叩いた。
子どもたちが一通りスタジオの外へ流れ、ゆっくりと勇 斗が横に置いていた紙袋と荷物を持ち腰をあげる。それと同時に太 智たちも後を追うように動き出した。
やはり、仁 人のいるスタジオ内に入ろうとしている。柔 太朗が中で待機しているが、こちらも外から挟みうちしてやるつもりだ。舜 太を先頭にそろりと近寄っていく。
勇 斗の背後まで距離を詰めた時、突然勇 斗がドア付近で立ち止まった。止まると思っていなかった二人は勢いのまま玉突きのようにその背中にぶつかる。
「うわっ!」
「何なんや、どうした?」
「あ、すみません」
ぶつかられた勇 斗が振り返り謝る。
至近距離で勇 斗と目が合った舜 太は、慌てて手を振る。
「いや、こちらこそ、勢いよくぶつかってしまってすみません」
「急に立ち止まったら危ないやんか。仁 人に用があって来たんやろ?」
「そうなんですけど、今はちょっと……」
「ん?」
「なんかあった?」
身体を斜めにして引いた勇 斗の横から二人は前方を覗き込んだ。
視線の先には、さっきまでレッスンを受けていたクラスの男児が一人残っていた。目線を合わせるように屈み込み仁 人が何か訊ねている。一言二言交わしていると、男児が目元を拭う仕草を見せた。仁 人は生徒の腕を軽く叩き、その子と一緒に横並びで鏡の前に立つ。ゆっくりと先程のレッスンでの振りを繰り返してやり、手で促すと男児も同じ動作を繰り返した。確認する動きから徐々に速さを変え、レッスン時と同じテンポで踊り終えると、二人でハイタッチを交わす。笑顔で男児が勇 斗たちの前を通りスタジオを退出していった。
「仁 人のやつ、ほんま面倒見いいな」
「ちょっと昔を思い出しちゃった。懐かしい」
太 智と舜 太は仁 人と共に一緒にダンススタジオに通っていたことを思い出す。同じクラスでレッスンを受けていた時、ああして並んでお互い振りを確認しあっていた。
「久しぶりに一緒に踊りたなったな……って、あいつ、もう仁 人のとこ行ってる!」
「ほんまや! はやっ」
二人が感慨深げに思い出に浸っている間に、勇 斗はもう仁 人へと直進していた。背中が遠い。慌てて二人もスタジオへ入った。
中では柔 太朗を挟んで、勇 斗と仁 人が向かい合っていた。
「佐野さん……」
「よっしー、動かないで」
「こんにちは、吉田さん。体調不良でレッスンお休みされてたと聞いたのですが、体調は大丈夫ですか?」
マスクを取りながら勇 斗がにこやかに話しかけると、仁 人は呆れたように息を吐いた。
「体調は大丈夫ですけど……、佐野さん、いつからいたんですか? レッスン中、鏡越しにめちゃくちゃ視線感じてましたよ」
「えっ! 気づいてくれてたんですか!? 俺、目立たないように静かに見てた気でいたんですけど。はわっ、認知されてた!」
「気づかないわけないでしょう! その格好で居られたら逆に目立ちすぎますって! 認知ってファンサじゃないんで」
小さく叫ぶ勇 斗に思わず仁 人は素でツッコんでしまう。
「でも、まさか吉田さんがヒップホップ教えてるなんて思わなくて……めちゃくちゃ格好良かったです! あと、そのセットアップ、すごく似合ってます! 可愛いですね」
「っ、え、あ、どうも。ダンスレッスンは幾つかジャンル担当させてもらってるんで……」
サラッと褒めちぎる勇 斗に、仁 人は一瞬言葉を失って耳を赤くした。これがイケメン俳優の手腕なのか、こわすぎる。
そこへ、「仁 人! 」「仁ちゃん!」と遅れて飛び込んできた太 智と舜 太が柔 太朗の左右にサッと滑り込んで三人でガード陣形を敷いた。
二人を見て「遅い」と言わんばかりに眉間に皺を寄せる柔 太朗に、太 智は顔の前で両手を合わせ、「ごめん」とジェスチャーを送る。
仁 人は急に現れた太 智と舜 太に驚いた。
「二人とも、なんでここにいるの?」
「俺たち柔ちゃんに呼ばれて来たんやもんね」
「え、そうなんだ」
仁 人は柔 太朗を見る。肩越しに柔 太朗は目線だけで頷いた。意図を察した仁 人はため息をつき、はぁ、もう過保護すぎだろ。とぼやく。
「来てくれてありがと、でも大丈夫だから。はい解散して。お疲れ様〜」
「ええ、せっかく来たのに仁ちゃん冷たい」
「そうやで。俺らめっちゃ急いで来たやんな? 見てみろ、舜 太の緊張感のないTシャツ」
「今それ言わんで良くない? でも呼ばれてすぐ駆けつけたんやで!」
「犬プリント可愛いじゃん」
「え、そう? 実はお気に入りなんよ」
えへへ。とTシャツの裾を引っ張り照れたように笑う舜 太に、仁 人もにこりと笑いかけると、じゃあそういうことで。と、二人をスタジオから追い出そうと両手を突き出した。背中を押された太 智はくるりとターンを決めて仁 人に向き直る。
「待て待て、まだ話は終わってない!」
「俺は何にもない! 柔 太朗もいちいち太 智たちに連絡するな!」
「いや、前のこともあるし、念には念を入れておかないと」
「そうやで仁ちゃん!」
「はぁ、お前ら……、あ、佐野さん」
仁 人は興味深げに四人の会話を聞いている勇 斗の視線に気付き、へにゃりと眉尻を下げながら太 智たち二人の背中を押した。
「二人は俺の幼馴染の太 智と舜 太です。騒がしくてすみません」
「いや、仲良さそうでいいですね」
勇 斗が左右に視線を巡らせ人懐こそうな笑顔を浮かべる。太 智は一歩足を踏み出し勇 斗の前に立った。
「そうや、俺たちは小さい頃から一緒にいるんや。佐野さん、仁 人に用あるんやったら、俺たち通してからにしてくれるか?」
「なっ、太 智、何だよそれ! 佐野さん、すみません。失礼なこと言って」
「いえ、全然です」
「ところで、あの、今日はどうされたんですか?」
仁 人は三人を押し退けるようにして勇 斗に訊ねるが、すぐ柔 太朗たちが組んだ壁にめり込むように後ろに引き戻される。その様子を見つめながら勇 斗は答えた。
「レッスンを休講してたので心配になって来ました。……それに、個人レッスンの件、もう一度ちゃんとお話ししたくて。あ、これ、お見舞いのフルーツです」
「えっ? フルーツ!? すごっ」
がさごそと勇 斗が手に持っていた紙袋から出してきたのは、籠に盛られたフルーツの詰め合わせだった。それを見た仁 人の声が思わず上擦る。フルーツは仁 人の大好物だ。しかも、見ただけでも分かる艶々の高級フルーツが綺麗に飾られているのだからテンションが上がってしまう。柔 太朗の肩ごしに目を見開いて覗き込んでいる仁 人に、勇 斗がにんまりと口角を上げた。
「フルーツ好きですか? 良かった。何が好きか分からなくてオススメのを盛り合わせてもらったんです」
「フルーツ、好きです。有難うございます」
「一番何が好きですか?」
「桃が大好きです」
「桃? 桃が好き?」
「はい、好き……」
「桃が?」
「す……」
「何を言わされとるんやぁぁああーーー!!!」
太 智の絶叫がスタジオに反響する。
仁 人がハッと我に返ると、太 智が後ろを振り返り詰め寄った。
「仁 人! おまぇえっ! チョロすぎるやろ! めっちゃ誘導されとったやんか!」
「え、なに、太 智? フルーツの話の何が……」
「佐野 勇 斗の顔見てみぃ、あれでもそう言えるんかっ?」
勇 斗の方を見やると、片手で顔を押さえながら真っ赤になって肩を震わせている。
「かわいいかわいいかわいいかわいい」
ブツブツと壊れたスピーカーのように繰り返される言葉に太 智は思い切り引いた顔をした。仁 人も仁 人で、ようやく誘導の意味に気づいて恥ずかしそうに柔 太朗の背中の影に隠れてしまう。
「柔 太朗も何で止めへんねん!」
「俺もフルーツの話だと思ってた」
「二人とも天然か! じゃ、佐野さん、お見舞いのフルーツ有難うございました。帰りお気をつけてさようなら」
ペコリと頭を下げて、「お出口はあちらです」とドアの方を指を揃えて示す。仁 人は「太 智!」と声を張り上げた。
「何言ってんだよ!」
「あんたαなんやろ? じゃあ分かるよな。Ωに不用意に近づくなっつってるねん」
「舜 太さんはαですよね。幼馴染だから慣れてるってことですか」
「え、なんで俺がαって分かったん?」
舜 太はβから転換したαのためか、元々あまりフェロモンも濃厚ではない。舜 太自身がうまく抑制できているのもあって、α特有のオーラや圧も感じにくく、仁 人も傍に居易いのだ。そんな自分を一目で見抜いた勇 斗に、舜 太は驚きを隠せない。
勇 斗は自らの鼻先を指でツンと突いてみせる。
「俺、鼻が利く方で、だいたい分かるんですよ。不躾に指摘してごめんなさい」
「あ、いや……ええよ。最初にその話持ち出したん俺らやし」
センシティブな属性に配慮して素直に謝る勇 斗に、舜 太も思わず毒気を抜かれそうになる。そこへ太 智が横から肘で突いた。
「感心しとる場合か! ほら舜 太、言ったれ! ここでお前が漢見せなどうすんねん! 仁 人取られてもええんか?」
「いやダメ!」
舜 太は首を横に振ると、表情を引き締め勇 斗に鋭い視線を向けた。
「佐野さん、イケメン俳優か知らんけど、仁ちゃんに近づかんといて! 俺は仁ちゃんの未来の番候補で100日後に結婚するんやからな!」
舜 太の啖呵に太 智と仁 人が左右から挟み込んで詰め寄った。
「待て舜 太、前は100回言ったら結婚するやったろ。カウントの単位変わっとるぞ」
「舜 太! 約束はしてない」
「細かいことはええねん! とにかく俺が仁ちゃんの王子様なんや!」
「王子様やめろ! 忘れろって言っただろ!」
「番候補……、100日後に結婚……」
勇 斗は噛み砕くように呟くと、ハッと目を見開いた。そして、どこか納得した満足げな顔で大きく口を開く。
「なるほど! じゃあ俺がそれより早く吉田さんと結婚したら良いってことですね!」
「なんでそうなるっ!?」
仁 人が目を剥いて叫んだ。
つい先日初めてレッスンで出会ってキスをされ、翌日土下座で謝罪を受けて交際を申し込まれ、今日の3回目で結婚?
「いやホントなんで?」
「なんで?……って」
勇 斗は顎に手をやり首を傾げた。
「番と結婚は別手段として考えていましたが、最終的にどちらもするなら一緒ですよね。そちらの考えに合わせます」
「合わせますじゃないです。合わせなくていいですし、擦り合わせて譲歩してるような言い方やめて下さい」
おかしいおかしい。何かがおかしい。
まだ何も始まってないのに?
なんなら終わったと思ってたのに?
どこを切り取っても結婚にはならないだろ。
佐野 勇 斗は何を考えている? あ、結婚か。俺と? なんで?
片手で顔を覆いながら仁 人はひとり迷宮へと入り込んでしまった。
一方、太 智と舜 太は呆然と顔を見合わせる。
何この人。思ってたのと違うかも。と認識を改め始めていた。
柔 太朗はずっと黙ったまま、ただただ涼やかな視線で勇 斗を観察している。この男の奇行はすでに学習済みだからだ。
四人の反応を物ともせず、にっこりと笑顔を浮かべながら勇 斗は太 智と舜 太に大股で近づいた。
「俺は太 智くんと舜 太くんとも家族同然のお付き合いがしたいです! 宜しくお願いします!」
「お、おん」
「ふぁっ、手っ」
そう言って順番に固く握手を交わす。
あまりの勢いに気圧され、つい二人とも握り返してしまった。舜 太に至っては「佐野 勇 斗と握手しちゃった」と手のひらを見つめる始末である。
有名俳優のプライドなど微塵も見せず、舜 太の牽制にも真っすぐ向き合い、幼馴染にまで全力で誠意を見せてくる勇 斗の姿に、太 智と舜 太も思わず「良い人なのかも?」とぐらついたのを頭を振って否定した。ダメだ。こいつは芸能人。油断するな。
柔 太朗は背後で迷宮入りして帰ってこない仁 人の肩を叩いて呼び戻す。
「よっしー、家に帰ってから好きなだけ悩んでいいから。俺から佐野さんに言おうか?」
「あ、そ、そうだよね。何の話だったっけ。ワケ分かんなくて飛んじゃった」
「まずはレッスンの話だったでしょ」
そうだった。
仁 人は勇 斗の前に進み出る。
「……あの、佐野さん。再度来ていただいたのは有り難いんですけど……」
仁 人は済まなそうに、だがきっぱりと首を振った。
「申し訳ありませんが、個人レッスンはお受けできません。元々のTV局依頼のレッスンは別のインストラクターが担当してると聞いてますし。やっぱり、俺たちの間で起きたことを考えると……、これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいかないので」
「……そうですか」
勇 斗は落胆の表情を浮かべたが、すぐに顔を上げると真っ直ぐ仁 人を見つめた。
「分かりました。無理にとは言いません。……でも、今日のレッスンを見て改めて吉田さんのダンスは勉強になると思ったので、仕事関係なく見学させてほしいんです。絶対に邪魔しませんから!」
正直、ダンスを褒められて悪い気はしない。真剣な眼差しに押し切られる形で、仁 人は「まぁ、見学だけなら……」と頷いた。
「やった! 有難うございます!」
勇 斗が両拳を上げて喜ぶ姿に、見学くらいなら距離もあるし大丈夫だろう。という考えは甘かったことを、仁 人はその後思い知ることになる。
コメント
2件
コメント失礼します! いつも楽しく読ませていただいてます! アイさんの作品、すごくテンポが良くてお話が面白くて大好きです! これからも作品楽しみにしてます😊