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「ちょっと、行きたいとこあるんやけど……」
放課後の校門前。
ロボロの言葉に、ゾムは一瞬きょとんとする。
いつものように何気なく帰ろうとしていたその足が、ふと止まる。
「……どこ?」
「川。あの……秘密基地、やったっけ。なんか……そこに、行きたい」
風が吹きゾムの前髪が揺れ、表情がほんの少しだけ緩んだ。
「……覚えてないんやろ?」
「夢で見た。川の音とか、誰かと一緒に笑ってて……すごい楽しかった。
なんでか分からんけど、ずっと残ってる。俺……たぶん、そこ、知ってる」
ゾムはうなずいた。
「……まぁ、、行こか」
河原には、子どもたちが秘密基地にしてたような古びたブランコや、大きな石で囲っただけの“隠れ場所”が今も少し残ってる。
ゾムは懐かしそうにそこに立って、笑う。
「ここやで……覚えてるか?ロボロ。昔、ここで秘密の地図描いたり、よう意味わからん冒険してたんよ。懐かしいなぁ…」
ロボロはゆっくり辺りを見渡しながら、目を細める。
「……ここや、、夢で見た風景や。石の並びとか、あの倒れかけた木も……。でも……なんで夢に出てきたんか思い出せんくて」
「それ、たぶん現実やったんやと思う。ロボロと俺、ほんまにここで遊んどったんやで」
ロボロがふらっと石のひとつに近づいて、そっと手を置く。
「……ここで、怪我したことある。転んで、血が出て。そん時、誰かが泣きそうな俺の手握って、『大丈夫や』って言ってくれた……」
ゾムは少し目を伏せて、そっと笑う。
「それ、俺やな。ロボロが泣かんように必死やったわwあん時はバリ焦ったなぁー…」
ロボロの手が震える。思い出そうとする脳が、夢と現実の境を揺らし始める。
「……なんで、忘れてたんやろ……こんな、大事なこと……」
「忘れたんやなくて、守ろうとしてたんかもしれへんで。ほんまに大事なもんって、強すぎる感情になることもあるからな!」
ロボロはその言葉に少し目を見開く。
そして——
「全部はまだ思い出せへん。でも……夢で見た大切な“誰か”は、ゾムやったって、今はわかる」
ゾムの目に涙が浮かぶ。
「それだけで、もう……十分や」