コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「勇斗まだ寝ないの?」
「台本に目通して、台詞入れたら寝る〜」
「あんま無理すんなよ」
俺の愛しき恋人の佐野さんはと言うと、絶賛ドラマの撮影中で忙しそう。
眠たそうに目を擦りながらも、時折見る眉間に皺を寄せる表情に"俺もなんか出来ないかなぁ〜"とふつふつ思ったり。
次の日まで持っていきそうな時には、温かいブラックコーヒーと勇斗が大好きな俺が焼いたクッキーを机にコトッて置いとく。
「お。ありがと」
「いや、全然。てか、もう次の日跨ぎそうだけどいいの?頑張るのもいいけど、無理するのも良くないからな?」
「うん。まぁでも、明日は昼からだし、今日は出来るところまでやっちゃおっかな〜って。仁人は気にせず寝てていいからな?」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」
そう言って一度あくびをしながら背伸びして、頑張る勇斗を見ちゃったもんだから、椅子に座って真剣に台本を見つめる勇斗の背に回って、顎にそっと手を添える。
そのままクイッと上を向かせて、唇にキスを落とした。
驚いたのか、上を向いたまま硬直状態の勇斗と真顔で目線を合わせ、少しの間秒針の音が部屋に響いた。
「え…?」
「ん?」
ポカーンとする勇斗に必死に笑いをこらえ、なんとか真顔でいる。
「台詞飛んだ…」
「あぁ…ごめん、じゃあもうしないわ」
なんて少しばかりイジワルな事を仕掛けてみると、耳が垂れ下がるのが見えるほどにしょげる勇斗。
そんなきらきらな目で俺を見つめたって何も無いぞ、なんて葛藤して。
「ねぇもーいっかいして〜」
「え〜、でも台詞飛んじゃうんでしょ?だったら出来ないな〜」
「それは…いきなりで驚いたから!それに、もう1回覚えればいいし!」
「でもなぁ…」
必死に弁解してる勇斗。
それでも折れない俺に、頬を膨らませ口をとんがらせた。
それがもうどうしようもなく可愛いから、とうとう俺の頬も緩み、とんがる可愛い口にもう一度。
「はい。2時には寝るんだよ」
「わかったぁー」
なんてまるで言うこと聞かない子供をみてるようで。
とりあえず大きな返事を聞いたから、俺は一人寝室へ向かい眠りにつく。
先に寝てていいよなんて言ったものの、内心は寂しかったりしちゃって。
それでも、明日は早く終わらせて一時でも早く家に帰って愛しの恋人とイチャイチャするために、一度背伸びをして気合を入れる。
するといきなり顔に手が触れ天井が見えると、瞬く間に唇が当たるもんだから、いきなりのことに驚いたのか、普段しないことをしてきた仁人に驚いたのか、もうわけわかんない。
けど、もう1回してくんないかなぁ…なんて期待持っちゃって必死に弁解する。
いつもだったら直ぐに折れてくれる仁人が、今日はなかなか手強くて、無理か…って諦めていると、あらびっくり。
すっかり機嫌が良くなった俺は元気に返事をして、再び台本とにらめっこ。
…
時計を見ると約束の2時に。
すっかり冷めてしまった残ったコーヒーとクッキーを写真に収め、世に発信。
いつものこれが美味しいんだよなぁ〜なんて匂わせる文を添えておく。
それでも匂わせ相手は直ぐにバレるもんで、仁人の名前が次々と表示される。
アラームをセットし寝室へ向かうと、仁人は見えず大きく膨らむ布団。
2人用の布団だから、1人で使ったらそりゃ隠れる。
布団の端をもってめくると、中には何かを抱きしめて小さく丸まった可愛い人がすやすやと。
おっと、何を抱きしめてるんですか仁人さんよ。
仁人が強く抱きしめる腕の中には、先程置きっぱなしにするなと怒られた俺の服。
なぁに可愛いことすんじゃん…なんて心に留めて、仁人の隣に横たわる。
俺が隣に来たのを感じたのか、薄ら目を開けた。
「ごめん、起こした?」
「…んいや、、もう終わり…?」
「一応終わったよ。約束した時間にもなったし」
「…そう」
そう言って再び俺の服を抱きしめて眠りにつこうとする仁人。
待て待て待て。
本人横にいるのにそれはなくない?
嫉妬しちゃうよ?
「仁人さ〜ん…?俺横にいますけど…?」
「ん…。」
「いや、うん。じゃなくて。もう服離してもよくないですか…?」
「…」
「…そっちより、俺の方が匂いするよ…?」
一か八かの的当ての質問は見事に当たったみたいで。
服を手放してそのまま俺に張り付く仁人。
服を軽く握り顔を埋め、俺の腕の中で再び静かに寝た。
はぁー…なに今日は…疲れた俺に最高の癒し。
仁人の体温で徐々に俺の体も温まり、うとうとし始める。
そして、仁人の額にキスをしてから共に眠りについた。
end.