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ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)は綿の精霊たちの女王様に気に入られてしまった。
彼は早くミノリ(吸血鬼)たちの元に戻りたいと思っているが、彼女は彼を独占したいと思っているため早く戻れそうにない。
「うーん、時々ここに来るのはダメなのか?」
「ダメです」
「じゃあ、週一」
「嫌です」
「なら、三日に一回」
「無理です」
「じゃあ、毎日?」
「ずっとあなたを抱きしめていたいです」
ずっとかー。
それはきついなー。
というか、そんなことしてたら旅を続けられなくなるじゃないか。
「ずっとは無理だ。俺は一応、旅人だから」
「旅人。旅の目的は何ですか?」
「うーん、まあ、あれだな。モンスターチルドレンっていう元人間の幼女たちを元の人間の姿に戻せる薬の材料を探してるんだよ」
「分かりました。では、私があなたの代わりにそれを手に入れます。そうすれば、あなたが旅をする必要はなくなります」
それは……そうなんだけど。
「それはダメだ。余計なことをするな」
「余計なこと? 私はあなたのためを思って……」
「迷惑なんだよ、そういうの。お前は良かれと思ってやろうとしてるんだろうけど、俺にとっては大きなお世話なんだよ。だから……」
彼女が彼から離れる。
頭を抱えてブツブツと何かを言い始める。
「……嫌《いや》……嫌! 嫌! 嫌! 私を一人にしないで。一人は怖い。一人は寂しい。一人は嫌《きら》い。誰かと一緒にいないと私は……私たちは!」
「おい、だいじょ……」
「そうだ……。私のものにならないのなら、そうなるようにすればいいんだ。子どもたち! この子を捕まえなさい!!」
『いいよー』
綿の精霊たちが白い波となって押し寄せてくる。
ここで捕まってしまうと、一生ミノリたちの元に帰ることができない。
そう思ったナオトはその場から全力で逃げた。
「絶対に捕まえなさい! これは命令です!!」
『はーい』
まずい! まずい! まずい! まずい!
このままじゃ絶対に捕まる!!
何か……何かないのか?
この状況を打破できる策はないのか?
ナオトが困り果てていると、それはひょっこりやってきた。
「とりあえずあいつらをなんとかすればいいの?」
「ああ、そうだな。まずはあいつらをどうにか……って、お前どうしてここに!?」
「話は後。今は少しでも遠くに逃げなさい」
「わ、分かった」
血液製の日本刀を二本持っている黒髪ツインテールの幼女はその場で回り始める。
それは次第に真紅《しんく》の竜巻となって綿の精霊たちを真っ赤に染めていった。
『うわー』
「……なぜ……なぜお前がここにいる。どうやってここまで来た! 答えろ!!」
綿の精霊たちが血の重みで動けなくなったのを肉眼で確認した彼女は女王様を見下した。
「はぁ? 女王のくせにそんなことも分からないの? まあ、いいわ。特別に教えてあげる。綿の木に水をやる時に、あたしの血を一滴混ぜておいたのよ。あとは分かるわね?」
「そ、そんな方法で侵入できるわけがない! 吸血鬼でもない限り、そんなことは!」
「それが今、あんたの目の前にいるんだけど」
「う、嘘だ……お前のようなガキが吸血鬼だと? そんなこと信じられるか!!」
「あんたも似たようなものじゃない。外見を偽《いつわ》って男を惑わす痴女王様」
「……! 殺す!!」
「やれるものなら、やってみなさいよ!!」
その後、綿の精霊たちの女王とミノリ(吸血鬼)は約三時間ほど戦っていたらしい。