テラーノベル
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涼ちゃんが起きて𓏸𓏸は、小皿にのせたパンを少しずつ手でちぎり、ひとくちサイズにして涼ちゃんの口元へそっと差し出した。
「ほら、無理しなくていいからね。少しだけでも――」
涼ちゃんは、ゆっくり何口か食べた。
そのたび𓏸𓏸は、あったかい眼差しで見守る。
でも、パンの感触や味が急に重く感じられて、
涼ちゃんはふいっと顔を横に向けた。
「……」
𓏸𓏸はそんな様子を見て、小さく尋ねる。
「もういいの?」
涼ちゃんは黙ってうなずく。
𓏸𓏸は、その返事をそっと受け止めると、
「わかった」とだけ言い、またキッチンに戻っていった。
静かな部屋にパンの香りと、
ふたりのささやかな時間だけが、そっと残った。
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