テラーノベル
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「さー行くぞー!」
太智が両手を叩きながら立ち上がる。
「今日もいっちょやったるでー!」
「朝から元気やなぁ」
朝が苦手な舜太がいつもより控えめに笑いながら言う。
「朝から元気なんが俺の仕事やもん」
「誰が決めたんだよそれ」
仁人が笑って突っ込む。
楽屋が、一気に笑い声で満ちる。
その空気が好きだった。
五人でいる、この時間が好きだった。
誰かがふざければ、誰かが笑う。
誰かが落ち込めば、誰かが隣に座る。
何度も悔しい思いをして、
何度も泣いて、
何度も諦めそうになって。
それでもこのグループはここまで来た。
家族みたいに当たり前に、みんながみんなを思いやれるグループだと思う。
血は繋がっていなくても、
誰かが笑えば嬉しくて、
誰かが苦しければ、自分も苦しくなる。
そんな当たり前を、何年も積み重ねてきた。
そして、その中心には、いつもはやちゃんがいた。
そんなことを考えていたら、
「柔太朗、」
名前を呼ばれて、ん?と振り返った。
「靴紐」
「あ」
足元を見ると、ほどけていた。
しゃがもうと腰を落としかけた、その瞬間。
「そのまま」
はやちゃんは当たり前みたいに俺の前にしゃがみ込む。
「え、自分でやるよ」
「いいから」
手早く結び直して、笑う。
「はい、できた」
「…ありがと」
「うん」
それだけ言って立ち上がる。
あまりにも自然だった。
自然すぎて、周りの誰も驚かない。
たぶん、俺も。
昔からこういう人だったから。
困っている人がいたら手を貸す。
靴紐がほどけていたら結ぶ。
荷物が重そうだったら持つ。
誰かが寒そうなら、自分の上着を渡す。
それがはやちゃんだった。
だから、胸の奥が、ほんの少しだけ温かくなった理由も、
その笑顔を、気付けば少し長く見つめていた理由も、
このときの俺は、まだ知らない。
あの日まで、
その優しさは、ずっと「みんなに向くもの」だと思っていた。
それが少しだけ、自分に向いているように感じてしまう日が来ることを。
勘違いみたいな胸の高鳴りが、もうはじまりだったことを。
ーーこのときの俺は、まだ、知らなった。
眠りひめ
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コメント
3件
ひーーーーー!ドキドキが過ぎる!
あんりさん、第22話後編2読みました〜!🌸✨ もう、はやちゃんの靴紐結ぶシーンが尊すぎて胸がギュッてなった😭💕「みんなに向く優しさ」が徐々に特別なものに変わっていく予感…!柔太朗の「まだ知らない」って伏線がニヤニヤしちゃうよ〜!このほっこりした空気感、大好きです!続きが気になりすぎる!