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ポートマフィアの倉庫で次々と発見される呪物。ありなの事件を通じて、それらが異能者を生み出す危険な力を持つことが明らかになったが、その裏にはさらなる陰謀が隠されていた。
「呪物を異能者に変換する計画」が、実はマフィア内部の一部の人間によって極秘裏に進められていたのだ。そして、その中心にいたのは黒蜥蜴の一員、立原道造だった。
いさなは呪物の調査を続ける中で、不審な行動を取る立原の姿を目撃する。マフィアの倉庫に侵入し、呪物に触れているのだ。
「立原さん、何をしているんですか?」いさなが問い詰めると、立原は驚いた様子を一瞬見せるが、すぐに笑みを浮かべる。
「いさなか。君は少し知りすぎたようだ。」
立原は懐から異能のための金属片を取り出し、いさなに向かって攻撃を仕掛ける。いさなは辛うじてそれを避け、立原との直接対決に突入する。
立原との戦闘の中で、いさなは立原の口から計画の一端を聞き出す。
「なぜこんなことをするんですか!」いさなが叫ぶと、立原は静かに答えた。
「ポートマフィアは変わらなければならない。呪物の力を完全にコントロールし、異能者を量産することで、組織を横浜最大の勢力に押し上げる。それが俺の目的だ。」
「そんなことをしても、組織が破滅するだけだ!」
「破滅するかどうかは、やってみなければ分からないさ。」立原の冷笑がいさなの心に突き刺さる。
いさなは立原の計画を幹部たちに報告するが、黒蜥蜴のメンバーたちに動揺が広がる。特に、黒蜥蜴のリーダー格である広津柳浪は立原の行動に困惑しつつも、その意図を理解しようとしていた。
「立原が本当にそんなことを…?でも、奴は忠誠心の塊だったはずだ。」広津が疑問を口にする。
「彼の忠誠心は、ポートマフィアを強くすることに向けられている。しかし、その手段が間違っている。」いさなが冷静に答える。
いさなは立原が隠れ家として使っている施設を突き止める。そこでは呪物を異能者に変換する研究が行われており、実験台にされた人間たちが苦しんでいた。
施設内に侵入したいさなは、異能者として実験体たちと戦闘を繰り広げる。その中で、立原が呪物の完全制御に近づいていることを知る。
いさなと立原は再び対峙する。
「この計画を止めるつもりか?いさな。」立原は冷たい目で問いかける。
「もちろんだ。こんな計画、ポートマフィアを破滅させるだけだ!」
激しい戦闘の末、いさなは立原を追い詰めるが、立原は最後に呪物を自らに取り込み、自分自身を異能者化させる。
「これが俺の答えだ。」立原は異形の姿に変貌しながら、なおも戦い続ける。暗闇に響く金属音。いさなの槍と、異形と化した立原の鋭利な爪がぶつかり合うたび、火花が散る。かつての同僚とは思えない壮絶な戦いは、倉庫の呪物たちを震え上がらせるかのようだった。
「立原さん、これ以上やったら、あなた自身が呪物に飲み込まれる!」
いさなが叫ぶが、立原の目はもはや人間の理性を失っている。
「構うものか。この力さえ完全に使いこなせれば、マフィアは世界を支配できるんだ!」
立原の体から漏れ出す異能エネルギーが暴走を始める。それは、呪物が持つ破壊の本質を物語っていた。
「これが俺の信念だと言うなら――俺はその信念を断ち切る!」
いさなは槍を大きく振りかぶり、一瞬の隙をついて立原の胸元を貫いた。
「ぐっ……!」立原は苦悶の表情を浮かべるが、その目にはどこか安堵の色が浮かんでいた。
「……ありがとう、いさな……俺が間違っていた……」
立原の体から異能の力が抜け、呪物も同時に力を失ったかのように沈黙する。彼は最後の力で微笑み、こう呟いた。
「マフィアを、頼む……」
いさなは無言で頷き、その場で立原を看取った。
事件が終息した後、呪物はポートマフィアの幹部会議により、すべて破壊されることが決定された。いさな自身もその任務に加わり、一つずつ呪物を火の中に投げ込む。
「呪物がなければ、また平和な日々が戻ってくる……かもしれないな。」広津が呟くと、いさなは首を振った。
「呪物が消えても、力を求める者は必ず現れる。そのときは――俺たちが止める。」
ポートマフィアのアジトには静寂が訪れた。しかし、いさなは胸の奥に重い影を感じていた。立原の死と呪物事件は、ポートマフィアの在り方そのものを揺るがすものだったからだ。
ある夜、倉庫を見上げながら、いさなは一人呟いた。
「立原さん、俺はあなたが目指した『強さ』の本当の意味を探してみるよ。」
その背後には、誰もいないはずの空間に一瞬だけ影が揺れた――まるで呪物がまだこの世に未練を残しているかのように。