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呪物事件から数ヶ月が経ち、ポートマフィアはかつてない静けさを取り戻していた。しかし、いさなの心はどこか晴れない。立原との戦いの中で感じた「異質な力」が、彼自身の体に微かに残っているのを自覚していたからだ。
ある夜、いさなは自分の部屋で異能の存在を試していた。手にした槍を握り締め、目を閉じる。
「……来い。」
その瞬間、槍の先端から黒い霧が漏れ出し、空間を歪めるように広がる。それはかつて立原が使った呪物の力と酷似していた。
「……まさか、俺が取り込んだのか?」
翌日、いさなは幹部の一人であり異能に詳しい森鴎外に相談を持ちかけた。
「これが呪物の残滓なのか、それとも……?」
森は鋭い目つきでいさなを見つめ、静かに語り始めた。
「君が立原を倒したとき、呪物の力の一部が君の体に移った可能性がある。だが、その力が君自身の異能と結びついた結果、新しい力として発現しているようだ。」
「新しい……力?」
森は頷き、続ける。
「君の本当の異能は、呪物の力を『吸収』し、それを自分の力として使うものだ。おそらく、それがいさな自身に眠っていた才能だったのだろう。」
いさなはその力に戸惑いつつも、試しに使う機会を得る。それは、ポートマフィアに近づく謎の敵――「影使い」と呼ばれる異能者との戦いだった。
影使いは虚空から無数の刃を出現させ、いさなに迫る。
「呪物の欠片を持つ者よ、お前の力を試させてもらう!」
いさなは槍を構え、意を決して異能を発動させた。彼の体を中心に黒い霧が広がり、敵の刃を飲み込む。それは霧の中で形を変え、逆に敵を襲う無数の槍となって返された。
「これは……俺の力?」
驚愕するいさな。しかし、影使いは笑みを浮かべる。
「面白い……その力、お前が制御できるものかどうか、見せてもらおう!」
戦いの中で、いさなは異能の力を使い続けることで体力が急激に削られる代償も知る。
影使いとの戦いの末、いさなは敵を倒すが、膝をつきながら苦しげに息をする。
「この力は、簡単には扱えない……」
そんな彼に、仲間の黒蜥蜴たちが駆け寄る。
「いさなさん、無理しないでください!俺たちも力を貸しますから!」
いさなは小さく笑みを浮かべる。
「頼りにしてるよ、みんな……俺一人じゃ、この力に飲み込まれるかもしれないからな。」
呪物の力を宿した異能者として、いさなはポートマフィアの新たな脅威と戦う決意を固める。
「この力を使うのは怖い。でも、それでも――立原さんの分まで、俺は戦う。」
そして、再び動き始めた呪物の陰謀。その影の先には、さらなる謎が待ち受けているのだった。