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すち、『』
みこと、「」
春の午後、校舎裏の小さなベンチ。
風に揺れる桜の花びらを、みことはぼんやり目で追っていた。
すち:『……ここ、空いてる?』
声をかけてきたのは、同じクラスのすちだった。
すちはクラスの中心的存在で、みこととは正反対のタイプ。なのに、なぜか話しかけられると胸が少しだけざわつく。
みこと:「う、うん。いいよ。」
すちが隣に座ると、肩と肩の距離が一気に近くなる。
触れていないのに、触れているみたいで、みことは思わず背筋を伸ばした。
すち:『桜、もうすぐ散るね。』
みこと:「そうだね….綺麗だけど、ちょっと寂しい。」
みことがそう言うと、すちは一瞬だけみことの横顔を見て、柔らかく笑った。
すち:『俺は、また来年も一緒に見れたらいいなって思うけど。』
みこと:「……え?」
その言葉の意味を考えようとしているうちに、すちの指先が、そっとみことの袖に触れた。
絡めるでもなく、ただそこにあるだけの、遠慮がちな距離。
すち:『嫌だったら、言って。』
小さな声。
みことは心臓の音がうるさくて、でも不思議と嫌じゃなくて一一ゆっくり首を振った。
みこと:「……嫌じゃない。」
すちの指が、ほんの少しだけ力を持つ。
二人は何も言わず、ただ並んで桜を見続けた。
言葉にしなくての、胸の奥があたたかくなる。
それが恋だと気づくには、もう少し時間がかかりそうだった。