え………?
てことは、阿部ちゃんが「森の熊さん」……?
状況的にこのことは疑いようがなかった。
あれは作者しかアクセス出来ない画面だ。以前、面白がって自分で登録した投稿画面を見たことがあるから間違いない。
それにしても、阿部ちゃんが小説を、しかも BLを、しかも俺たちのBLを書いてるなんて想像もしてなかった。
俺はその日は一日中、阿部ちゃんのことが気になって収録に集中できなかった。
仕事終わり。
阿部ちゃんに声を掛けられて、俺たちは2人で楽屋に残った。
💚「佐久間。俺の携帯見たよね?」
🩷「ごめん…」
💚「そして、あれが何の画面か理解してるよね?」
🩷「うん…」
もう誤魔化せない。阿部ちゃんは知られたくなかったろう。そして俺も知られたくなかった。自分たちのBLを読んでるなんて…。
🩷「あのっ!俺、誰にも言わないから阿部ちゃんも…」
💚「佐久間、BL好きなの?」
🩷「いや、特にそういうわけでは…」
俺は口ごもった。初めは興味本位で読み始めて、今はそりゃあ毎日楽しんでるけど、ちゃんと読んでるのは森の熊さんの作品だけだし、たまたま森の熊さんのファンになっただけだ。
その正体が阿部ちゃんだったことはマジで驚いたけど、できればこのまま何もなかったことにしてほしい。
もう読まないから、誰にも言わないでと俺は阿部ちゃんに頼んだ。
🩷「俺はメンバーのことを決してそういう目で見ているわけじゃなくって…!」
俺の必死な弁解を、阿部ちゃんは黙って聞いている。無言が怖かった。表情もいつもと感じが違う気がする。
💚「俺はメンバーのこと、特に佐久間のことをそういう目で見てたけどね」
🩷「えっ!」
信じられない言葉に、すぐに理解が追いつかなかった。
もしかして聞き間違い?
しかし、阿部ちゃんは落ち着いている。
阿部ちゃんはじりじりと壁際に俺を追い詰めて、両腕を伸ばし、俺をそこから逃げられないようにした。
🩷「あべ……ちゃん?」
💚「俺のファンならさ、あべさく読んでるんでしょ?」
俺は恥ずかしくて阿部ちゃんの顔を見れない。目を瞑って、阿部ちゃんの声だけ聴いていた。
💚「あの作品、俺の願望がかなり入ってるんだけど?」
🩷「いや、もう、無理、しんどい!!」
💚「それってどういうこと?俺のことが気持ち悪いってこと?」
🩷「ちがっ…」
阿部ちゃんは、優しく唇を重ねて来た。
柔らかい阿部ちゃんの、夢にまで見た唇の感触は、想像したよりも熱くて、想像したよりもずっと甘かった。
💚「これが俺の気持ちなんだけど。返事、くれる?」
俺は、両手で顔を隠して、答えた。
🩷「これが、俺の夢でした」
阿部ちゃんは、俺を優しく抱きしめて、耳元で囁いた。
💚「ありがとう。大好きだよ、佐久間」
後日判明したことによると。
「森の熊さん」というペンネームは、阿部→あべ→べあ→熊→森の熊さんとのことだった。
俺はほとんど毎回コメントを付けていたことを白状した。阿部ちゃんは目を丸くして驚いていたけど、これって運命だねなんて気障なことを言っていた。
変な始まり方だったけど、俺たちはこうして始まった。
🩷「ねえ、まだ書くの? BL?」
俺は阿部ちゃんに聞いてみた。
💚「書くよ。めめなべ書いてるの、面白いんだよね」
🩷「じゃあ、俺たちのことも小説にするの?」
💚「それはもう現実になったから、書かないかな」
俺は俺の全然知らない阿部ちゃんが逆にミステリアスで面白くて、それからも俺たちは小説の感想についてだけはコメントのやりとりを続けている。
おわり。
コメント
18件
とても面白くて見てて楽しかったです!
うわああああああ!!! もう最高!あべさく書いてくれてありがとう😭 めちゃ面白かった!好き!まきぴよちゃん好きー!🫶
わぁ〜最高(。・‧̫・。)o🪄💘