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「痛いっ 止めないか! 十夜っ」
「蒼空くん、やめないで」
副部長も落ちているビート版を持って部長を叩き始めた。
「このホモ!」
「無理矢理するなんて竜のバカ!」
「いたたたっ お前が逃げるからだ いたたた」
「――逃げる?」
副部長はビート版を縦に投げつけると、ドス黒い顔で笑う。
「お前、毎回毎回毎回毎回バカ力で、俺の服のボタンが毎回どれだけ飛んでいると思ってるの?」
ん? 毎回?
「お前が押し倒した時に、紋章ボタンが弾けて……。見つかるまで何もしないって俺、約束したよね?」
「むっ。したが」
尚も俺ははビート版で叩きつけるが、部長は副部長ばかり見ている。
「俺は昨日ボタンを探してて、部室でゴキ〇リを見つけて貧血起こしたのに、君は呑気に発情しやがって」
「な、なんか最近、太一が元気無かったからその」
いつも自信満々の部長がたじたじで、副部長を怖がって真っ青だ。
「お前!」
「太一っ」
「お前のせいだ、ばかぁぁぁ!!」
「副部長っ」
細い副部長が、筋肉もりもりの部長を持ち上げたかと思うとそのまま部室から部長を放り投げた。
ザッパーンと水しぶきの音がすると、副部長が泣きそうな顔で帰ってきた。
俺、完全に蚊帳の外だし。
あの……なんか……その。
痴話喧嘩に見えるのは俺だけですか?
「ごめんね。十夜くん」
びくっ
投げられないとは思いつつも驚いてしまう。
「あのかき氷食べてた時に、その、ボタンについて聞いてきたけど、こんな理由なんだ……」
未だに外でバシャバシャとプールの中にいる音がするが副部長は気にも止めず、当番の仕事をしようと用具入れからホウキを取りだした。
「あの、つまり副部長は部長にセクハラされて困っ」
「うわぁぁ! 十夜くんっ」
用具入れからササッと黒い物体が飛び出す。
「ああああ!!」
「どうしたっ 太一っ」
ザッパーンと部長がプールから勢いよく飛び出して駆けつける。
「で、でたぁぁぁ」
「この虫の分際で俺の太一にぃ!!」
部長は落ちていたビート版でそいつを倒した。
「……ありがとう。竜」
「良いんだ。お前が無事なら」
「……竜」
「太一……」
熱い。
熱い熱い熱い熱い。
この気温30度を越える真夏日より、
部長と副部長の見つめ合う視線が熱い。
怖い。あの二人が怖い。
「そろそろ何で元気が無かったか教えてくれないか? 俺が悪かったなら坊主にして土下座する」
「…………」
副部長は俺を見た後に、部長を見上げた。
「俺という恋人がいるのに……」
ひー恋人??
俺は何も聞いてない。聞いてはいけない。
耳を塞ごうとして次の言葉に固まった。
「電車で、十夜くんのお尻触ってたよね?」
「あ?」
「部長だったんですか!?」
なんで?
なんで俺の尻を?
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慌てて尻を押さえて退くと、部長が俺と副部長を交互に見ながら慌て出した。
「誤解だぞ!? 俺は違うぞ!? 俺のラブは太一だけだぞ!?」