テラーノベル
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なんだよ。ラブって。
その前に何でホモを隠してないんだよ。
「あれは! 太一が、十夜のファスナーが開いてるのに気づいて言い出せなかったから代わりに言おうとしたが満員電車で動けなくて、仕方なく……。見つからないように上げてやろうとだな」
「触ったんだ」
「触ったんだ」
「前! 前だけだろ!」
「俺、お尻も触られました」
じとーっと部長の顔を見ると、目が点になった。
暑苦しい顔から、いきなり存在感の薄い顔に。
その後、部長は滝汗を掻き始めた。
「俺、俺は、俺は俺は俺は」
「触ったんだ?」
静かな、けれど空気を切り裂くような副部長の声に、蝉が鳴くのを止めた。
俺たちの回りだけ、二度ぐらい気温が下がっている。
「た、太一の尻なら誘惑に負けて触った」
か細い、部長とは思えない小さな声で言われた。
蝉が、気まずげに逃げていく。
パサパサと。
「俺のお尻と副部長のお尻、間違えたの?」
「竜?」
部長は、
怒られる前に自分からプールへ落ちた。
「まぁ痴漢は部長って事で解決したことにするけど、
俺の私物や水着が無くなるのは部長じゃないですよね?」
水面に水死体のように浮かぶ部長に聞くと、力なく首を動かした。
ふるふると。
「私物は君のファンじゃないかな?」
「ファン? 夏樹のファンの嫌がらせじゃないの?」
というか夏樹、全然追いかけて来ないな。
あいつ、俺にキスした事を全く悪いと思ってないんだろうな。
ちょっと腹立ってきたぞ。
「十夜」
部室を掃除し着替えていたら夏樹がやっと登場した。
二人の1年の首根っこを付かんで。
「あの、副部長と痴漢部長」
「痴漢!?」
「痴漢の犯人が捕まった事は夏樹には内緒でお願いします」
「痴漢の犯人……」
「俺が上手く伝えますんで」
話が進まなくなるので、部長は無視するとしても、
まだ問題は山積みなんだ。
近づいてくる夏樹を睨んだが夏樹も目を反らさなかった。
「俺達が争ってる間に、1年たちがお前のカバンを漁ってた」
「ごめんなさい」
「十夜先輩の困ったような面倒臭そうな顔が可愛いくて」
「別にいい。全部返せば。……いや、水着は気持ち悪いから買い直せ」
真っ青な1年二人を睨み付けた後、夏樹を見た。
「勝負で決着さえつけば1年も馬鹿な真似しねーだろ?」
「……十夜」
「さっさと着替えようぜ」
気づかないふりをしていた。
だが馬鹿な部長たちのイチャイチャのせいで気づいてしまった。
「十夜先輩がんばれー!」
「勝って下さいー!」
「夏樹先輩! 信じてますっ」
「日本新記録出して下さい!」
ただの俺たちの部長争いの声援かと思っていたんだ。
耳を塞いで気づかないふりをしていたが、耳を澄ませばほら。
「十夜先輩可愛いー!」
「ああ。十夜先輩の水着姿……」
「泳いだ後の息をはぁはぁと吐くあの顔、色っぽい」
…………。
「俺、夏樹先輩になら抱かれたいっす!」
「ああ。競泳水着と日焼けした肌……」
……。
そうだ。
耳を澄ませば分かる。
この水泳部はホモだらけなんだ。
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