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ショッピングモールの崩れたフロアに、重い静寂が落ちた。崩れた天井から差し込む月明かり。
割れたガラス。
散乱する商品棚。
その中央で、二人の少年が向かい合っていた。
黒崎レイ。
そして――カイ。
レイの体からは青白い雷が弾けている。
一方カイの周囲には、目には見えない歪みが広がっていた。
空気が、ねじれている。
ルナが瓦礫の陰で息を整えながら呟いた。
「……何あれ」
ミナも小さく言う。
「空間が……曲がってる」
ドクター・カインは少し離れた場所で楽しそうに眺めていた。
「さあ見せてくれ」
「No.0とNo.1」
「我々の最高傑作を」
その言葉と同時だった。
ドンッ!!
床が爆ぜた。
レイが先に動いた。
雷をまとった足で一瞬にして距離を詰める。
「はあっ!!」
拳が振り抜かれる。
バチィッ!!
雷が弾ける。
しかし――
その拳は届かなかった。
レイの拳の前で、空間が歪んだ。
グニャリ、と。
まるで見えない壁に触れたように拳が逸れる。
レイが目を細める。
「……空間操作か」
カイは微笑む。
「正解」
次の瞬間。
カイが指を軽く動かした。
その瞬間――
ドォン!!
レイの体が横へ吹き飛ばされた。
「ぐっ!」
壁に激突する。
コンクリートが砕けた。
ルナが叫ぶ。
「レイ!」
カイはゆっくり歩く。
「兄さん」
「昔から思ってた」
レイが立ち上がる。
口の端から血が流れていた。
カイは続ける。
「どうしてそんな弱い人間を守ろうとするの?」
ルナが怒鳴る。
「弱くない!」
カイはちらりと見る。
「でも事実だよ」
「人間は弱い」
「壊れやすい」
「すぐ死ぬ」
そしてレイを見た。
「でも僕たちは違う」
「僕たちは選ばれた存在だ」
レイは静かに言った。
「……くだらない」
カイの目が細くなる。
レイは拳を握る。
「人間とか」
「実験体とか」
「そんなの関係ない」
雷が激しく弾ける。
バチバチバチ!!
「守りたい奴がいる」
「それだけだ」
次の瞬間。
レイが再び突っ込む。
ドン!!
雷の速度。
一瞬で背後へ回る。
「遅い」
蹴りを叩き込む。
バキィン!!
しかし――
また空間が歪む。
攻撃が曲げられる。
カイは軽く手を振った。
ドォン!!
レイが再び吹き飛ぶ。
ミナが歯を食いしばる。
「強すぎる……」
ルナも悔しそうに言う。
「レイの攻撃が全部ズレてる」
カイは淡々と説明した。
「僕の能力は」
「虚空(ヴォイド)」
「空間を歪める力」
指を動かす。
すると――
レイの足元の空間がねじれた。
グニャリ。
レイの体がバランスを崩す。
その瞬間。
カイが拳を振った。
ドォン!!
衝撃波。
レイが床に叩きつけられる。
「がはっ……!」
ルナが立ち上がる。
「もういい!」
影が広がる。
「レイ一人で戦わせない!」
影の刃がカイに襲いかかる。
シュッ!!
しかし。
カイは視線すら動かさない。
空間が曲がる。
影が全部逸れる。
「意味ないよ」
カイは指を弾いた。
ドン!!
ルナが再び吹き飛ぶ。
「うっ……!」
ミナが叫ぶ。
「ルナ!」
カイは冷たく言う。
「弱い」
「邪魔」
その瞬間。
レイの声が響いた。
「……やめろ」
レイが立っていた。
体はボロボロ。
しかし目は燃えている。
「ルナに」
「手出すな」
雷がさらに激しくなる。
バチバチバチバチ!!
ミナが驚く。
「雷の出力が……上がってる」
カインが笑う。
「おお」
「覚醒の兆しか」
レイはゆっくり息を吐く。
「カイ」
カイが首を傾げる。
「何?」
レイは言った。
「弟だって言うなら」
「教えてやる」
雷が体を包む。
床が焦げる。
「兄貴の喧嘩の仕方」
ドォン!!
レイが消えた。
カイの目が少し見開く。
「速――」
その瞬間。
真上。
レイが空中から落ちてくる。
「らぁぁ!!」
雷の拳。
ドガァン!!
空間が歪む。
だが――
今度は違った。
レイはその歪みに合わせて拳の軌道を変えた。
ドン!!
カイの肩に直撃。
カイが初めて後ろへ下がる。
ルナが叫ぶ。
「当たった!」
ミナも驚く。
「空間の歪みを読んだ!?」
カイは少し驚いた顔をしていた。
「……へえ」
レイは構える。
「同じ手は食わねぇ」
雷がさらに広がる。
空気が震える。
カイは静かに笑った。
「面白い」
そして――
カイの目が金色に強く輝いた。
空間の歪みが一気に拡大する。
バキバキバキ!!
床が割れる。
壁が裂ける。
ミナが青ざめる。
「これ……まずい」
ルナも気づく。
「さっきよりヤバい」
カイは言った。
「兄さん」
「本気でやろう」
空間が収縮する。
そして――
ドォォォン!!
巨大な歪みがレイへ襲いかかった。
レイは雷を最大まで高める。
「来いよ!!」
雷と虚空。
二つの力が激突する。
その瞬間――
ショッピングモール全体が揺れた。
轟音。
衝撃波。
そして煙。
視界が真っ白になる。
数秒後。
煙がゆっくり晴れていく。
ルナが震えながら言った。
「……レイ?」
ミナも叫ぶ。
「レイ!」
煙の中。
一つの影が立っていた。
レイ。
しかし――
彼の雷は。
今までと違っていた。
青白い雷の中に。
黒い稲妻が混ざっていた。
カインが息を呑む。
「まさか……」
レイの目がゆっくり開く。
雷が唸る。
カイが静かに呟いた。
「……覚醒?」
レイは拳を握る。
バチバチバチバチ!!
そして言った。
「第2ラウンドだ」
その瞬間。
雷が爆発した。
――続く。