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『心の檻』
tg視点
しおたんの腕の中は、あったかくて、
だけど、ちょっとだけ――苦しかった。
tg しおたん、苦しい……
俺がぽつりと呟くと、しおたんは少しだけ腕の力を緩めた。
so ごめんね。痛かった?
tg ううん、ちがうの……
苦しいのは、胸のほう。
あの子の声を聞いたとき、
一瞬だけ、“外”を思い出しちゃった。
学校のこととか、友達のこととか。
全部、置いてきたはずなのに。
so ちぐちん
しおたんが、俺の頬に手を添える。
so 何か、迷ってるの?
その目が、俺の奥の奥まで見透かしてくる気がして、
ごまかしたくて、目を逸らした。
だけど、しおたんは微笑んだまま、囁くみたいに言った。
so だったら、もっと深く、ちぐちんを閉じ込めてあげようか?
tg …え?
so もう、何も思い出さないように。何も迷わないように。全部、俺が壊してあげる――ね?
その瞳が、少しだけ狂気を帯びていて。
でも俺は、その言葉に、なぜか――安心してしまった。
tg しおたん、俺……
そう言いかけたとき、部屋の奥から「ガタンッ!」と何かが落ちる音がした。
びくっと肩を跳ねさせた俺に、しおたんは柔らかく言った。
so ちぐちん、待ってて。すぐに、処理してくるから
tg え、処理って――
so すぐ戻るから、大丈夫
優しく、けれど有無を言わせない声。
そして、扉が閉まる音。
しおたんの足音が遠ざかる中、
俺はふと、布団の下に――あの子のスマホがあることに気づいた。
tg …どうして、これが…?
画面に浮かぶのは、開いたままのメッセージアプリ。
そして、そこに書かれていた言葉。
「ちぐさくん、助ける。絶対に迎えに行くから」
ドクン、と胸が鳴った。
扉の向こうから、なにかが壊れる音が響いた。
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