テラーノベル
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『逃げ場のない声』
tg視点
布団の下から出てきたスマホ。
それは、俺が“外”とつながってた証みたいで――
触れる指が少し震えた。
画面に残されてた、メッセージ。
『ちぐさくん、助ける。絶対に迎えに行くから』
その文字を見た瞬間、
胸の奥で何かが軋む音がした。
tg 俺……どうすれば……
思わず呟いたその声を、しおたんが聞いたのかもしれない。
so ちぐちん、いる?
ふわっとした優しい声が、扉の向こうから聞こえてきた。
でも――その響きに、いつもみたいな甘さはなかった。
tg …しおたん?
ガチャ、と扉が開いて、しおたんがゆっくり入ってくる。
so スマホ、見つけちゃったんだね。ちぐちん
tg う、うん…
しおたんは微笑んだまま、俺の隣に腰を下ろす。
だけど、その手は――俺の手から、スマホをそっと奪っていた。
so この子、ちぐちんを迎えに来るって言ってた?
tg うん……でも俺、別に、行きたいわけじゃ…
うまく言葉にできなくて、しおたんの顔を見た。
so ちぐちん
しおたんの声が、すこしだけ低くなった。
so 外に、行きたいの?
tg 少しだけ、外の空気……吸いたいなって……
その瞬間、しおたんの手が、俺の手をぎゅっと握った。
so だめ。ちぐちんが外に出たら、誰かに奪われてしまうでしょ?
tg そんなこと……
so あるの。だから、お願い。ここにいて
しおたんはゆっくり立ち上がって、玄関の鍵に歩いていく。
そして――カチャリ、と鍵をかけ直す音がした。
so ね、ちぐちん。もう少しだけでいいから。ここにいて?
その背中が、とても優しそうに見えたのに、
俺の胸は、なぜか苦しくて、動けなくなった。
――でも。
そのとき、ポケットの中で、
もう一つのスマホが、そっと震えた。
tg(……え?)
俺のじゃない。しおたんが使ってた、予備のスマホ。
震える画面に映った通知――
『送信完了:「ちぐさくん、助ける。絶対に迎えに行くから」』
目を疑う間もなく、扉の外から――「コン、コン」と、誰かがノックする音が響いた
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